光ピンセットを用いてタンパク質一分子を変性させる時に必要な力学を計測する手法はタンパク質のコンフォメーション実空間を決定できる有効な手法である。しかし、タンパク質一分子を引っ張る際には通常、二本鎖DNAを取っ手として用いるため、DNAおよびRNA結合タンパク質に対しては本手法を用いることができない。そこで、本研究ではハンドルとしてポリエチレングリコール(PEG)鎖に着目した。今年度は、昨年度の知見から、性質や長さの異なる複数のPEGをモデルタンパク質の両端に結合させる一分子を新たに設計した。まず、タンパク質の片側を、PEGを共有結合してあるビーズに結合させ、もう片方をビオチンを介してビーズに直接結合させた複数の分子を構築し、一分子力学計測を行った。様々な反応条件や力学計測の条件を検討し、また、原子間力顕微鏡による観察なども行った結果、PEGに共有結合している方のビーズの形状や性質に問題があるために、光ピンセットによる捕捉が不安定になり測定が難しいことが明らかになった。そこで、タンパク質の両端にPEGをもつ一分子の構築のため、ビーズに既に共有結合しているPEGを用いる代わりに、PEGの末端に結合させたジゴキシゲニンを介して、そのPEGと抗ジゴキシゲニンをもつ球状のビーズを結合させてハンドルとしたタンパク質一分子を新たに設計し、合成を行った。その結果、両端にPEGをハンドルとした新たな一分子実験系を構築することができた。
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