研究課題/領域番号 |
26650064
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
西谷 秀男 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (40253455)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | タンパク質 / 細胞周期 / スピンドル / DNA |
研究実績の概要 |
細胞周期の過程において遺伝情報が正確に継承されることが、生命の維持に必須である。この過程において基本となるのが染色体の複製と分配である。Cdt1は染色体複製のライセンス化因子として複製の開始に関わる必須因子であるが、一方、Cdt1はM期から安定に存在し始め、染色体分配にも関与することにより、M期とS期を共役する重要な機能を持つと考え研究を行った。 1、まず、M期に安定化する機構の解析を行なった。これまでの解析によるCdt1のリン酸化がSCF-Skp2によるユビキチン化を抑制するという結果をもとに、特にサイクリン結合部位に近いセリンのリン酸化に注目した。この部位に対するリン酸化ペプチド抗体の作成を試みた。非同調細胞およびM期に同調した細胞より調製したサンプルを調製してリン酸化ペプチド抗体を用いてウエスタンブロッティングを行なった。M期細胞では顕著な反応が見られたが、G1期のCdt1が多い非同調細胞では反応しなかった。また、この部位をアラニンに置換したCdt1-Aでは、M期でもリン酸化抗体は反応しなかった。しかし、Cdt1-Aを発現させてみたところ不安定にならなかった。この変異は、サイクリン結合を抑制してしまったようである。 2、Cdt1をノックダウンしたM期細胞では、スピンドルの異常が観察された。そこで、ノコダゾールでM期に同調後、ウオッシュアウトしてM期進行を調べたところ、Cdt1をノックダウンした細胞では、M期からG1期への移行に遅延が見られた。また、Cdt1ノックアウト細胞でMad2のキネトコア結合が確認された。 3、M期の細胞をCdt1抗体で免疫染色したところ、以前の報告に有ったキネトコア染色は見られなかった。我々の抗体は細胞全体を染色したが、スピンドルが存在する近辺がより顕著に染色された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
サイクリンA結合部位近傍のセリンをアラニンに置換したが、予想に反してCdt1はM期で不安定にはならなかった。しかし、この部位を含むリン酸化ペプチド抗体を作成したところ、M期特異的にリン酸化が起こることを確認できた。リン酸化ペプチドを用いて、サイクリンAの結合に抑制的に作用するかどうか確認したい。Cdt1がキネトコアに局在してM期に機能するという報告が有ったが、我々の作成した抗体ではそのような検出できず、むしろスピンドル周辺に局在する可能性が示唆された。Cdt1のノックダウンは、スピンドル形成異常を起こすので、Cdt1のM期蓄積が正常なスピンドル形成に関与することで、M期開始と進行を安定に進め次期のDNA複製と上手くカップリングすると捉えることができる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を基に、 1、Cdt1のサイクリンA結合部位近傍のリン酸化がM期安定化機構に関与することをさらに確実にするために、この領域のセリンリン酸化ペプチドと非リン酸化ペプチドを結合したビーズを用いてプルダウンアッセイを行なうことにより、セリンのリン酸化がサイクリンAとの結合に影響するかどうかを明らかにする。 2、独自に作成した抗体および入手できる抗体(市販品を含む)を用いて、M期細胞での免疫染色を行ない、Cdt1の局在部位をさらに詳細に確認する。 3、酵母2ハイブリッドスクリーニングで同定したクローンおよびマス解析により新規にCdt1結合因子を同定して、M期にCdt1とともに機能する分子の検索を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
大学からの講座費により購入した試薬等を当該研究の遂行のために使用したため、それに対応する分、次年時使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度の助成金と合わせて研究の遂行に必要な物品費の購入に充て、適正に使用する。
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