細胞周期の過程において遺伝情報を正確に継承するために基本となるのは、染色体の複製と分配が正確に行なわれることである。Cdt1は染色体複製のライセンス化因子として複製の開始に関わる必須因子である。再複製の抑制のためS期開始後分解されるが、M期から再び安定に存在し始め、染色体分配にも関わることが示され、M期とS期を共役する重要な機能を持つと考え研究を行った。 1. Cdt1がM期に安定化する可能性として、S期およびM期でのCdt1の状態の違い及びサイクリンA-CDKの状態の違いが関連する。前者の関わりを明らかにするため、S期(MG132処理)及びM期細胞よりCdt1-FLAGを調整し、精製サイクリンA-Cdk2(バキュロ細胞より)との結合実験を行なった。抽出液中でのCdt1とサイクリンA-Cdk2の結合がM期細胞抽出液で低下していたと同様に、精製タンパク質でもM期Cdt1との結合が低下することを確認した。 2. 酵母2ハイブリッドスクリーニングで得られた微小管局在タンパク質TACC3およびKif4A、質量分析で得られたRif1、NuMAタンパク質との結合を調べた。Cdt1-FLAGを一過的に細胞に発現後、免疫沈降したところ、ジェミニンに加えてKif4AおよびTACC3との有意な結合が見られた。また、Cdt1のリン酸化に関わり中心体に局在するPlk1の結合も確認できた。 3. 市販のCdt1に対する抗体を用いてM期に置ける染色を調べたところ、前中期から中心体とその近傍の紡錘体の染色が見られ、中期さらに後期まで検出された.終期では、Cdt1は核に局在した。 よって、Cdt1は、中心体近傍で紡錘体結合タンパク質との相互作用を通してスピンドルの形成に関与すると示唆された。
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