研究実績の概要 |
光操作可能なシグナル分子を開発し、細胞内でシグナル分子を選択的に活性化する手法を確立するのが本研究の目的である。特に、CaMKII, PKC, PKAの3種類のキナーゼについて、LOV2ドメインを用いることで光応答性の分子の開発を行っている。現在までに、様々な長さのリンカーでキナーゼドメインとLOV2を融合し光応答性のキナーゼの開発を試みているが、これまでの実験から全体的な問題として、LOV2ドメインを挿入することによって分子全体のフォールディング効率が落ちてしまうことが分かってきた。このような場合は分子を発現させると細胞内で大きな凝集塊を形成し、発現させた分子が機能しなくなってしまう。そこで、平成27年度はLOV2にランダム変異導入することによって、分子のフォールディング効率を改善することを試みた。具体的には、ランダム変異導入したLOV2のC末端にmCherryを融合し大腸菌に導入し、大腸菌内でmCherryの蛍光が明るいものを選択した。ランダム変異導入したLOV2をその結果、LOV2へのランダム変異導入によってフォールディング速度を2倍程度上昇(mCherryの蛍光が2倍の速度で明るくなる)させることに成功した。さらに同定したLOV2変異体のN末端とC末端にmEGFPとmCherryをそれぞれ融合したFRETセンサーを作製した。この分子をHeLa細胞に遺伝子導入して、2光子蛍光寿命イメージング顕微鏡でFRETを観察することにより、光応答性があることを確認した。
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