研究課題/領域番号 |
26650070
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
高木 昌俊 国立研究開発法人理化学研究所, 今本細胞核機能研究室, 専任研究員 (60324779)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 分裂期染色体 / 染色体安定性 |
研究実績の概要 |
ヒト培養細胞などで分裂期初期における染色体動態を観察すると、個々の染色体が独立に挙動するのではなく、全ての染色体が緩やかにまとまった一群として挙動しているように見える。また分裂期同調した培養細胞から染色体を生化学的に調製すると、一つの細胞に由来する染色体は緩やかにまとまり、ボール状の構造を成す。分裂期染色体が一群として挙動することを促すような「染色体間グルー(糊)」の存在が予想される。本研究では、これまでに具体的な検討が一切なされてこなかった染色体間グルーについて、その成分の同定に挑み、かつ性状解析を行う。また染色体間グルーの果たす生理的意義について、「全ての染色体が一つの核に収納される確率を高めることで、染色体安定性維持に貢献する可能性」を特に検討する。 初年度において必要な細胞株(セントロメア領域を特異的に可視化できるHeLa細胞など)を樹立し、観察および解析を行ったが、観察の再現性や測定の信頼性が不十分であった。そこで今年度(2年目)においては主に、実験系の洗練に取り組んだ。具体的には、染色体倍数性が著しく乱れたHeLa細胞の使用を止め、染色体倍数性が比較的よく保たれているHCT116細胞を使用することとした。また染色体間グルーの主要な構成成分であると予想されるKi67抗原を細胞から除去する際に、長時間を要するsiRNAの使用を止め、CRISPR-Cas9を利用したゲノム編集によりKi67抗原にAID(オーキシン誘導性デグロン)タグを付する手法をとることとした。細胞同調とオーキシン添加による条件的分解とを組み合わせることにより、分裂期直前の数時間の操作でKi67抗原を細胞から除去することが可能となった。またゲノム編集により内在性因子に蛍光タグを付することが容易に行えるようになり、それを利用して観察および解析に適した細胞株を多数樹立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究遂行の基本となる実験系について、改良する余地が認められた。これに取り組んだだめに、当初の計画よりはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
実験系の見直しを行ったために、当初の計画よりはやや遅れたが、今後の研究で遅れを取り戻す。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通りに使用しが、予め厳密には算出できない支出(研究の進行状況に応じて変わるDNA配列解析依頼費などの支出)があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の物品費などに繰り越して使用する。使用計画の全体像に変更はない。
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