研究実績の概要 |
上皮細胞の形態形成について、初期の集合の形態を規定することで、それから起こる細胞間接着等を経た自律的な形態形成の様子を定量的に解析する基盤とするのが本研究の目的である。 初年度は金属製の山形の鋳型を設計し、作成を依頼した。鋳型の材質はシリコン基盤よりも加工の易しいニッケル金属を用い、実際に鋳型の作成が可能であった。その鋳型にPDMSを流し込むことによって細胞集団の形を規定するV字の溝を作った。これについて細胞を培養してみたが、PDMSのみであると一晩で細胞がPDMSに接着を起こしてしまい、細胞間だけの接着による形態形成を見るのには不都合であった。そのため、サイトップというコート剤を塗布したところ、少なくとも丸一日は基質との接着もなくなり、観察可能になった。これについては、理化学研究所の先端光学素子開発チームの協力を得た。 ただ、初めの設計の通り(幅160 ミクロン, 長さ160, 320, 480 ミクロン、深さ80 ミクロン、溝と溝の間の平らな領域の幅160 ミクロン)であると、V字溝の深さが浅く、またV字溝の間隔が広くて平らな土手状の基質の上にも細胞が載ってしまうため、溝と土手との細胞が接着してしまい、正確に初期の細胞集団の形を規定することがかなり困難であることがわかった。 そのため、鋳型の改善を考案した。V字溝をより深く、また溝間の土手の幅も極力狭くするということで正確に初期形態を規定しようとしている。ライブイメージングに関しては予定通り可能であることが確かめられた。一度に多くの箇所を撮影するには、相当低倍率の対物レンズ(2.5倍程度)が必要であることも比較検討によりわかった。
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