研究課題
上皮細胞の形態形成について、初期の集合の形態を規定することで、それから起こる細胞間接着等を経た自律的な三次元形態形成の様子を定量的に解析する基盤とするのが本研究の目的である。初年度は金属製の山形の鋳型を設計し、作製を依頼したが、V字溝の深さが浅く、またV字溝の間隔が広くて平らな土手状の基質の上にも細胞が載ってしまうため、溝と土手との細胞が接着してしまい、正確に初期の細胞集団の形を規定することがかなり困難であることが分かった。そのため、今年度は鋳型の改善を行い、V字溝をより深く、また溝間の土手の幅も極力狭くするということで正確に初期形態を規定することを試みた。これはほぼ期待通りとなり、隣の溝の細胞と土手を通じて繋がることもなくなった。ライブイメージングに関しても低倍の対物レンズ(2.5倍)である程度の数の溝について記録が可能であった。その結果、縦横比の大きな長四角の形を初期形状とした場合、細胞集合のある時期で、細胞塊の縦横比が急に小さくなる(丸に近くなる)現象が見られることがわかった。これにより上皮細胞が接着をして細胞塊になる過程で、全体を丸くしようとする働きが見られることが明瞭になった。初期の形態の縦横比がかなり大きい場合、細胞塊は2、3の塊にちぎれることもあった。これも長軸を短くしようとする力が働いていることの反映であると考えられる。このような初期の形状に関わらず、全体を丸くしようと形を補正していく現象が、どのような構造形成や力の感受を伴うか等の実験をこの系を用いて今後明瞭にしていきたい。PDMSへのコートにより細胞のPDMSの接着を極力防いでいるが、現在のところ、やや効果にぶれがあるが、細胞集合の初期形態を限定する加工培養基質に関してはおおむね実用レベルなものができたと考えている。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
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