研究課題
卵母細胞における紡錘体スケーリングの機構を解明することを目指し、計画通り平成26年度においては以下のことを行った。まず、卵母細胞の細胞質量を自在に増減できる系を確立した。細胞質量を減らすために、GV (Germinal vesicle)期にあるマウス卵母細胞の細胞質をマイクロピペットで定量的に吸引した。また、細胞質を増加させるために、GV期の卵母細胞と、GV核を除去した卵母細胞を電気融合させた。これら細胞質量を増減させた卵母細胞は、減数第一分裂をほぼ正常に進行することを確認した。次に、これら細胞質量を増減させた卵母細胞について、紡錘体の形状パラメーターを経時的に定量できる系を確立した。染色体マーカーH2B-mCherryと紡錘体マーカーEGFP-MAP4を顕微注入し、共焦点顕微鏡でライブイメージングを行った。得られた画像を三次元再構築し、紡錘体の体積、長軸の長さ、幅について、時間を追って測定した。その結果、二倍細胞質を持つ卵母細胞では紡錘体体積がほぼ2倍になり、半量細胞質を持つ卵母細胞では紡錘体体積がほぼ半分になることが明らかになった。この細胞質量と紡錘体体積の比例関係は、減数第一分裂を通してほぼ変わらなかった。紡錘体の長軸の長さと幅の比率は細胞質量に依存して変化しなかった。さらに、受精卵においても同様に細胞質量を変化させたところ、第一分裂における紡錘体の体積が変化した。この受精卵における観察結果はこれまでの報告とは異なるものであり、細胞質量を変化させるタイミングを検討することで新しい知見が得られる可能性が考えられた。また、本研究にて確立した卵母細胞の融合技術を用い、減数第一分裂と第二分裂の卵母細胞を融合させることで、動原体のリン酸化制御に第一分裂特異的な染色体の性質が関わることを示した(Yoshida et al, 2015 Dev Cell)。
1: 当初の計画以上に進展している
平成26年度に予定したすべての計画を遂行し、かつ受精卵における紡錘体スケーリングについてこれまでの報告とは異なる予想外の結果が得られた。さらに、本研究によって確立された技術を用い、動原体のリン酸化制御に第一分裂特異的な染色体の性質が関わることを示した(Yoshida et al, 2015 Dev Cell)。
卵母細胞の減数第一分裂における紡錘体スケーリングの機構について、複数の仮説を立てこれらを検証していく。核/細胞質の比率に応じて紡錘体サイズが変化する可能性について調べるため、2倍の核を持つ卵母細胞を作出し、減数第一分裂における紡錘体サイズを定量する。2倍の核を持つ卵母細胞で紡錘体サイズが減少した場合には、核内に紡錘体サイズを減少させる分子があると考え、その候補因子について解析する。2倍の核を持つ卵母細胞で紡錘体サイズが変化しなかった場合には、細胞表層から紡錘体サイズを抑制させる分子シグナルが存在すると考え、その候補分子について解析する。また、受精卵についても同様の実験を行う。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件) 備考 (1件)
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http://www.cdb.riken.jp/lcs/index.html