研究課題
本研究では、卵母細胞における紡錘体スケーリングの機構を解明することを目指した。まず、卵母細胞の細胞質量を自在に増減させ、減数第一分裂の過程をライブイメージングする系を確立した。得られた画像を三次元再構築し、紡錘体の体積および形状について定量的な解析を行ったところ、卵母細胞の細胞質量にほぼ比例して紡錘体体積が変化し、その形状は保たれることが分かった。このときの紡錘体サイズの変化は、核/細胞質の比率の変化や紡錘体から細胞表層までの距離よりもむしろ、主に細胞質量の変化によってもたらされていた。また、受精卵においても、細胞質量を変化させるとそれに応じて紡錘体体積が変化することを見出した。このことはこれまでの報告とは異なる結果であり、さらなる詳細な検討が必要である。さらに、細胞質量を変化させた際の紡錘体スケーリングにともない、卵母細胞の機能性が変化することを示唆するデータを得た。このことは、これまで指摘されてこなかった、細胞内スケーリングがもたらす細胞内機能へのネガティブな影響を示唆しているのかもしれない。これらの点についてさらに解析を進めることで、卵母細胞における細胞内スケーリングの生理的意義を総合的に理解する必要がある。また、本研究で確立した細胞融合の系を用い、減数第一分裂と第二分裂の卵母細胞を融合させることで、動原体のリン酸化制御に第一分裂特異的な染色体の性質が関わることを示した(Yoshida et al, 2015 Dev Cell)。
2: おおむね順調に進展している
平成26年度の研究で示したマウス卵母細胞における紡錘体スケーリングについて、平成27年度ではその背後にある分子機構を検討した。まず、核/細胞質の比率に応じて紡錘体サイズが変化する可能性について検討した。その結果、核/細胞質の比率よりもむしろ細胞質の量によって紡錘体サイズが大きく変化することを見出した。そこで、量依存的に紡錘体サイズを変化させる因子が細胞質に存在すると考え、そのような因子のスクリーニングを行った。また、細胞サイズによって変化する細胞内構造およびイベントは、紡錘体サイズのみではないことが示唆された。
これまでの研究から、卵母細胞における紡錘体スケーリングの機構について一定の答えを得ることができた。さらに、紡錘体サイズ以外にも細胞サイズによって制御される細胞内構造とイベントを定量的に解析し、スケーリングの生理的意義を総合的に理解する必要がある。
これまでの研究から、紡錘体スケーリングの分子機構について、一定の答えを得ることができた。さらに、その生理的意義について調べたところ、予想外にも、卵母細胞の細胞サイズによって制御される細胞内構造およびイベントは、紡錘体サイズのみではないことが示唆された。そこで、卵母細胞スケーリングの生理的意義を総合的に理解するために、次年度まで計画を延長して実験を行う必要があると判断した。
卵母細胞の細胞サイズを変化させたときの紡錘体の機能性についてより詳細な解析を行う。特に、紡錘体の安定性と正確な染色体分配を行う能力について検討を行う。
すべて 2016 2015 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 6件) 備考 (2件)
Cell Reports
巻: 14 ページ: 2718-2732
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Developmental Cell
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細胞工学
巻: 34 ページ: 1063-1066
http://www.riken.jp/pr/press/2015/20150529_1/
http://www.cdb.riken.jp/news/2015/researches/0609_8071.html