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2014 年度 実施状況報告書

マイクロ流体制御を用いた時空間的視点からの幹細胞分化の解析と培養システム構築

研究課題

研究課題/領域番号 26650075
研究機関東京大学

研究代表者

前川 敏郎  東京大学, 生産技術研究所, 博士研究員 (30415294)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードマイクロ流体デバイス / 幹細胞
研究実績の概要

従来の培養皿などを用いた培養方法は一様な環境下での細胞培養条件であるのに対し,本研究課題ではマイクロ流路内の時間的・空間的な物質のパターンを連続的に制御可能となる細胞培養システムを設計・作成した.厳密な制御が可能なシリンジポンプと,それらのポンプを複数かつ同時に制御可能な多チャンネルポンプコントローラを用いることで,本システムの基本構成部分を構築した.次に,時間的・空間的パターンの制御を検証するため,複数の培養液用入力ポートと細胞導入用ポートなどを備えた基本となる細胞培養用マイクロ流体デバイスを設計・作成し,条件検討と動作の実証実験を行った.また,これらの細胞培養用デバイスの流路設計,送液の流量や時間などフロー系条件などの検討を繰り返し行い最適化を実施した.その結果,マイクロ流路内に均一な培養液が流れている状態から,流路内の各培養液の空間的分布を連続的に制御可能であることが確認された.
次に,マウスiPS細胞を用い,マイクロ流路内における未分化維持因子の空間的パターンを制御する実証実験を行った.細胞培養用デバイス内にマウスiPS細胞を播種し,未分化維持培地で培養を行った後,未分化維持因子を含まない培地を同時に送液することで培養チャネル内の未分化維持因子の空間的な分布を制御した.その結果,未分化維持因子の空間的な分布によって,未分化マーカーが発現している細胞と発現が低下している細胞が,未分化維持因子の空間的分布に対応して見られることを確認した.本細胞培養デバイスでは,同一培養チャネル内において空間的に異なる条件下での細胞培養が可能であり,また時間的にこれらの条件を制御できることが確認され,本システムの基本的動作が実証された.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本システムの根幹となる厳密な流体制御については,低流量においても厳密な制御が可能なシリンジポンプやシリンジ,管路系の組み合わせや,それらのポンプを同時に制御可能である多チャンネルポンプコントローラを用いることで達成され,基本システムを構築することができた.また,細胞培養用マイクロ流体デバイスについて,構築した基本システムに対応して拡張できるよう考慮した設計を行い,実際に入力系統を増やした細胞培養用デバイスの設計を行った.しかし,これらのシステムと細胞培養用デバイスの設計・作成および条件の最適化を繰り返す工程に多くの時間がかかり,計画にやや遅れが生じた.このため,当初計画していた「幹細胞の分化を決定づける時空間的な要因の解析」については,初期段階の解析および細胞培養用デバイスの最適化の一部分のみ実施した.
なお,平成27年度に計画している「分子の時空間的制御が可能なマイクロ流体デバイスの設計と構築(デバイスの拡張)」について,平成26年度での基本システムの構築と細胞培養用デバイスの設計において拡張性を考慮に入れた設計とすることで,デバイスの拡張の初期段階として先行してこれに含める形で実施した.

今後の研究の推進方策

平成26年度に実施できなかった「幹細胞の分化を決定づける時空間的な要因の解析」について,平成27年度の計画である「細胞の機能を誘導あるいは維持可能な培養法の探索」を含めた形で実施する.特に,細胞外マトリックスの代替となるような新規材料の評価については,本細胞培養デバイスでは細胞接着因子などをデバイス内に容易に導入可能な設計をすでに行っているため,早い段階から評価・解析を進めていく.さらに幹細胞だけではなくその他の細胞について,本細胞培養デバイスによる培養を実施し,細胞の機能発現や長期維持などの緻密な制御が可能となる培養条件の探索を進めていく.
デバイスの拡張については,さらに入力系統の増設やバルブの追加などを検討し,より複雑な空間的・時間的パターンを制御できる細胞培養システムの設計と構築を実施する.培養条件の探索とデバイスの拡張および細胞培養システムの設計と構築は,協調して行う事で効率的に進めていく.また,段階的に自動的に条件を制御するシステムについて試行していくとともに,デバイス上での各種アッセイ系の導入について検討を行い,細胞培養から機能解析までを1つのデバイスで一貫して行えるシステムの構築を目指す.

次年度使用額が生じた理由

平成26年度において「幹細胞の分化を決定づける時空間的な要因の解析」を行い,その結果を学会にて発表する予定だったが,システムとデバイスの設計・作成および条件の最適化を繰り返す工程に多くの時間がかかり,計画にやや遅れが生じたため初年度での学会での発表を見送った.このため旅費およびその他の経費について未使用額が生じたため,次年度使用額が生じた.

次年度使用額の使用計画

平成26年度において「幹細胞の分化を決定づける時空間的な要因の解析」を行い,その結果を学会にて発表する予定だったが,システムとデバイスの設計・作成および条件の最適化を繰り返す工程に多くの時間がかかり計画にやや遅れが生じたため,初年度については学会での発表を見送った.このため旅費およびその他の経費について未使用額が生じたため,次年度使用額が生じた.

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公開日: 2016-05-27  

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