研究課題
ワカレオタマボヤ Oikopleura dioicaは成体でもオタマジャクシ型をしており、我々ヒトを含む脊索動物に共通な体制を持ちながら、体を構成する細胞数が少なく、5日という短い世代時間をもつなど、他の脊索動物にない多くの特性を備えている。本研究では、このオタマボヤにトランスポゾンをもちいた技術を適用し、発生遺伝学的な研究を可能にすることを目的とした。ワカレオタマボヤで転移活性をもつトランスポゾンを調べた。オタマボヤでは、蛍光タンパクのmRNAを卵巣に注入することにより生まれてきた多数の卵や胚に蛍光タンパクが発現してくる。そこで、転移酵素の発現を調べるため、EGFP標識した転移酵素トランスポゼース7種 (Sleeping beauty, Minos, Tol2, piggyBac, Ac/DS, Space invador, TcBuster) のmRNAを卵巣に注入した。注入胚を蛍光顕微鏡で観察し、蛍光の有無を調べたところ、どれも充分な蛍光を観察することができなかった。現在、その原因を究明中である。また、上記のように卵巣顕微注入法をもちいて卵形成過程の卵巣内にDNAやRNAを取り込ませることが可能となっている。このような利点をから、遺伝子機能を阻害する為のDNAi法を確立した。DNAi法は、細胞内に二重鎖DNAを取り込ませることにより、この取り込んだDNAの配列に基づき配列特異な機能阻害が引き起こされるという現象である。これまでに、ワカレオタマボヤにおいて二重鎖DNAを細胞内に取り込ませることで配列特異な転写阻害およびmRNAの分解が引き起こされるということを、多細胞動物で初めて発見した。このDNAiの発見により卵巣内にPCR断片を注入するだけで配列特異な機能阻害が可能となったことから容易に遺伝子機能が解析可能となった。
3: やや遅れている
導入したトランスポゼースの翻訳効率を調べるために、EGFP標識した転移酵素トランスポゼース7種 (Sleeping beauty, Minos, Tol2, piggyBac, Ac/DS, Space invador, TcBuster) のmRNAを卵巣に注入した。注入胚を蛍光顕微鏡で観察し、蛍光の有無を調べたところ、どれも充分な蛍光を観察することができなかった。また、おそらくこのことが原因で、トランスポゾンをゲノムに導入することに未だ成功していない。オタマボヤの生殖巣や胚にはトランスポゼースmRNAの翻訳を阻害する仕組みが存在している可能性がある。また、オタマボヤの内在性母性mRNAには、高頻度でトランススプライシングのリーダー配列がついていることがわかったので、このリーダー配列が効率的な翻訳に関わっている可能性がある。
RNAseqを行った結果、オタマボヤの内在性母性mRNAには、高頻度でトランススプライシングのリーダー配列がついていることがわかったので、このリーダー配列が効率的な翻訳に関わっている可能性がある。そこで、注入するEGFP標識した転移酵素トランスポゼースのmRNAに様々な形でこのリーダー配列を付加し、翻訳効率を検討する。もし、効率的な翻訳が確認された場合、トランスポゾンをゲノムに導入することを試み、トランスジェニック個体の作成、エンハンサートラップへと実験を進める予定である。
32,464円が次年度使用額として生じた。少額ではあるが、当初予定よりは研究費が節約できたため次年度に使用することにした
32,464円の次年度使用額を、薬品類購入額として使用する。
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すべて 雑誌論文 (8件) (うち国際共著 1件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 7件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
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