研究実績の概要 |
体長10~15mm程度の小型のミミズのヤマトヒメミミズ(Enchytraeus japonensis)は環境に応じて繁殖システムを切り換える独自の生活環を持つ。無性生殖では1個体の成虫が2~5の体節ごと自切して10断片となり、個々の断片が1週間で再生、10個体となる。断片化した個体を低密度で高栄養価の飼料で飼育すれば再生過程で生殖器が分化し有性個体として他の個体と接合、産卵する。ヤマトヒメミミズの特異的な生殖システムであることが予想されるが、再生・分化の過程でどのように生殖器分化の切り換えられるのか、再生・分化のモデルとして大変興味深い。 本研究では飼育条件を検討し、85%以上の個体群が無性生殖で再生した個体が分化過程で有性化する飼育条件で有性化を誘導去れ、生殖細胞の分化に関与すると言われるVASA遺伝子の相同遺伝子Vlg1及びVlg2が発現することを確認した。 極めて遺伝情報の少ないヤマトヒメミミズではde novoシークエンス解析および既知情報のアノテーション解析は目的の候補遺伝子を見出す有効な手段となる。本研究では有性化を誘導した自切後3日目の再生過程個体群から抽出した転写産物を用いてde novoシークエンス解析および既知情報のアノテーション解析を行った結果、自切断片化直後から顕著に発現する遺伝子や既知遺伝子のホモログや性決定因子として知られるSryや生殖器で特異的発現が知られるPiwiやnanosのホモログやと推定されるcDNAを含む既知の73,710のORFが見出された。
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