研究課題/領域番号 |
26650090
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
濱田 隆宏 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20452534)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 植物 / シロイヌナズナ / RNA顆粒 / ストレス顆粒 / P-body |
研究実績の概要 |
RNA顆粒はRNAとタンパク質から構成される超巨大複合体であり、真核生物においてmRNAの輸送、翻訳抑制、分解、低分子RNAの機能発現など様々な役割を果たしている。植物において、これらRNA顆粒の構成因子の欠失変異体の多くは致死となり、発生や成長、分化に必須である。本研究ではストレス顆粒やProcessing body (P-body)に代表される植物のRNA顆粒が電子顕微鏡でどのように観察をされるかを免疫電子顕微鏡観察(免疫電顕)により明らかにする。免疫電顕の材料としてストレス顆粒とP-bodyのマーカーであるDCP1-GFPとeIF4A2-GFPを発現させたシロイヌナズナ植物体を用いた。固定には高圧凍結固定法を用い、抗体はGFP抗体を用いた。 蛍光観察により、ストレス顆粒は通常の生育条件(22℃)では顆粒を形成せず、高温条件(37℃)で顆粒を形成することが知られている。免疫電顕観察において、eIF4A2-GFPは22℃では特定の構造に局在せず、37℃では繊維状構造を持つ顆粒に局在していることが多かった。一方、P-bodyは蛍光観察により、通常の生育条件でも顆粒を形成しており、37℃では顆粒の数と大きさが増加することが知られている。免疫電顕観察において、DCP1-GFPは細胞質よりも明らかに電子密度が濃く一様な構造を持つ顆粒に局在していることが多かった。また高温条件ではその構造が明らかに大きくなった。これらストレス顆粒とP-bodyに共通する構造上の特徴として、電顕観察で容易に区別できるリボソーム顆粒が顆粒内では見られないことが明らかとなった。またP-bodyやストレス顆粒マーカーではラベルされないが、P-bodyやストレス顆粒に似た形態を有する顆粒様の構造も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ストレス顆粒とP-bodyの免疫電顕観察に関しては、当初の計画通りに進んでいる。また今後の研究に必要な形質転換植物体も有しており、研究の遅れは特にない。そのため「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
免疫電顕で観察できることが確実となったP-bodyとストレス顆粒の観察数を増やし、P-bodyとストレス顆粒の大きさを定量する。 今年度の研究でストレス顆粒やP-bodyではないが、類似した形態を有する顆粒構造が観察された。そこで細胞質RNA 顆粒として知られているAGO1顆粒、TSN 顆粒、TD 顆粒の免疫電顕観察を行う。これらの観察に必要なAGO1-GFP, TSN-GFP、TD-GFPは既に有している。 類似した形態を持つ複数種のRNA顆粒が観察される場合、それらのRNA顆粒をGFPで可視化して共発現させた植物体を作製し、免疫電顕観察を行う。この植物体を用いた免疫電顕で全ての類似顆粒構造がラベルされる場合、これ以上のRNA顆粒の探索は不要となる。一方、一部の類似顆粒構造がラベルされずに残る場合は、更なるRNA顆粒の探索が必要であることがわかる。
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次年度使用額が生じた理由 |
支払い請求額の60%は執行済みであり、残りの40%の50万円が残っている。これは予定していた購入物品よりも高機能な新製品の販売が決まっており、新製品の納期を待って次年度の購入になったためである。また新規RNA顆粒候補の可視化ラインを作製するために前倒し支払いを申請したが、研究代表者が予想以上に多忙であり、作製する時間が取れなかった。この可視化ラインの作製は次年度に行う。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画より大きな変更はなく、次年度使用額は予定していた物品の購入と可視化ラインの作製に用いる。
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