本研究では植物のRNA顆粒が電子顕微鏡でどのように観察をされるかを免疫電子顕微鏡観察(免疫電顕)により明らかにすることを目的としている。そのため代表的なRNA顆粒であるストレス顆粒とP-bodyをマーカータンパク質であるeIF4A2-GFPとDCP1-GFPを用いて解析を行った。 27年度の研究において、ストレス顆粒が形成されない通常の生育条件(22℃)ではeIF4A2-GFPは特定の構造に局在せず、38℃では繊維状構造の顆粒に局在していることを明らかにした。また22℃で顆粒を形成しているP-bodyでは、22℃でも38℃でも繊維状構造の顆粒に局在していた。これらストレス顆粒とP-bodyに共通する構造上の特徴として、電顕観察で容易に区別できるリボソーム顆粒が顆粒内では見られないことが明らかとなった。 28年度にはサンプル数を増やし、顆粒サイズの測定を行った。その結果、38℃、15分の高温ストレス処理では直径約200 nmのストレス顆粒が形成され、38℃、60分では約300 nmに増加することが明らかとなった。P-bodyの大きさは、22℃では直径約130 nm、38℃、15分の高温ストレス処理では約170 nm、38℃、60分の高温ストレス処理では約180 nmであった。またRNA顆粒内にはリボソーム顆粒が見られないリボソーム排除領域ができるが、28年度の電顕観察ではリボソーム排除領域の一部に免疫金粒子が偏在することが確認された。さらに高感度の共焦点顕微鏡を用いたストレス顆粒、P-body、AGO1顆粒の局在解析も行った。その結果、これら3者の極少量のシグナルはほぼ全ての顆粒で観察されたが、その存在比は大きく違った。これらの結果より、ストレス顆粒、P-body、AGO1顆粒は高温ストレス時に同一の顆粒に存在することはあるが、均一ではなく隣り合って存在する可能性が高いと考えられる。
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