研究代表者らは、小胞体の分子シャペロンHsp70システムが、シロイヌナズナ雌性配偶体形成時の極核の核膜融合に必要であることを明らかにした。本研究はIR-LEGO法を発展させ、雌しべ内の雌性配偶体を対象とした時期特異的・細胞特異的な遺伝子発現誘導法を確立し、これを用いて極核融合における小胞体のHsp70システムの役割の解析を目指す。 本年度は、Cre-loxP部位特異的組換えの誘導による遺伝子発現誘導系の確立を行った。雌性配偶体の発達段階から雌性配偶体全体で発現するES2(embryo sac 2)プロモーターと、標的遺伝子であるミトコンドリア局在型GFPの間にloxP-H2B-GFP-loxP配列を挿入した組換え遺伝子を構築し、これをHsp18.2プロモーターでCre組換え酵素を発現するHS-Cre株に導入した。得られた形質転換植物の雌しべ全体の熱処理により、雌性配偶体全体での遺伝子発現が誘導された。また、 IR-LEGOによる遺伝子発現誘導では、Gooh et al. (2015)の条件を用いることで長時間の胚珠の観察が可能となった。細胞化前の胚珠への赤外レーザ照射によって、成熟した雌性配偶体全体での標的遺伝子の発現が観察された。また、成熟した雌性配偶体の中央細胞部分への赤外レーザ照射によって、中央細胞特異的な遺伝子発現が誘導され、IR-LEGOによる遺伝子発現誘導が雌性配偶体でも可能であることが示された。
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