研究課題
陸上植物は進化の過程で環境と発生を調和させる高度な制御ネットワークを発達させ、過酷な陸上環境にける繁栄に成功した。進化の過程ではゲノム重複による遺伝的冗長性の増大と遺伝子の多機能様化がある。転写制御因子は、被子植物のモデル植物であるシロイヌナズナには約2000個コードされるのに対して、基部陸上植物苔類ゼニゴケでは約300個存在した。このことから、進化とともに制御ネットワークが複雑化したことが読み取れる。ただし、ゼニゴケの転写因子総数は少ないものの、シロイヌナズナと同規模の遺伝子ファミリーから構成される。このことは制御系の原形が、植物進化の過程で苔類が分岐する以前の共通祖先で既に成立していたこと、その後多様化したことを示唆している。本課題では、ゲノム編集技術を応用して転写因子機能を解析するというものである。これまでにCRISPR/Cas法がゼニゴケで機能することを確認した。EFプロモーター制御下のCasとU6プロモーター制御下の標的遺伝子特異的なsgRNAにより、sgRNAに依存した変異体を取得した。また、Casの発現を最適化することでその効率も上昇した。これらの系を任意のタイミングで作動させるために誘導発現系を開発した。GUS遺伝子およびCitrine遺伝子をレポーターとして、ゼニゴケの内在性ヒートショックプロモーター(HSP)の機能を確認した。HSP:CREとCaMV35Sプロモーター:GUS-LoxP-Citrine-LoxPを利用し、CRE依存的にCitrine活性の出現頻度を確認した。新興モデル生物ゼニゴケにおけるゲノム編集および誘導発現系を確立することに成功した。
2: おおむね順調に進展している
調書に記載した実験計画の初年度の目標であるゲノム編集の効率改善や誘導発現系の開発に成功した。一部は論文投稿も行ったため。
研究は順調に進展しており、計画の変更や実施上の大きな問題点はない。計画にそって着実に研究を進展させる。また、次年度が最終年度であるため、成果の公表を確実に行う予定である。
研究が継続するため、無理にゼロにするような支出をしなかたため。
消耗品費に充当する。
すべて 2014 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Plant Cell Physiol.
巻: 55 ページ: 475-481
10.1093/pcp/pcu014
http://www.plantmb.lif.kyoto-u.ac.jp/