研究課題
本研究では、近年同定された植物の紫外線(UV-B)受容体タンパク質UVR8と超短パルスレーザー発振装置を利用して、時間的、空間的な分解能に優れた遺伝子発現誘導系の開発を試みた。UVR8は定常状態において安定なホモ二量体として植物細胞核内に存在し、280~300nmの紫外線の照射により可逆的に単量体化され、特定のタンパク質と結合できるようになる。このUVR8のユニークな性質を利用し、遺伝子転写誘導系を開発することとした。平成27年度に引き続き、融合タンパク質LexA-VP16-mCherry-UVR8とYFP-UVR8-RDとを組み合わせた系において、YFP-UVR8-RDの発現量が比較的高い株の選抜を行った。それらを用いたUVレーザー照射による誘導実験を行ったが、LexUASpro-H2B-tdTomatoレポーター遺伝子の発現の基底レベルが高く、UVレーザー照射による有意な発現上昇は見られなかった。新しいアプローチとして、UV-B照射依存的にUVR8と結合するとされるCOP1タンパク質のWD40ドメインを利用し、LexA-mCherry-UVR8とYFP-VP16-WD40を組み合わせた系の構築を行った。両タンパク質因子とも35Sプロモーターを用いて発現させたが、これまでのところYFP-VP16-WD40を安定して発現する植物個体が得られておらず、UVレーザー照射による誘導実験には至っていない。以上の結果の原因としてはYFP-UVR8-RD 及びYFP-VP16-WD40のタンパク質構造上の不安定性及び植物細胞に対する毒性が考えられ、その問題の解決のためには融合タンパク質のデザイン及び発現様式におけるさらなる改良が必要と結論付けられた。
すべて 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件)
Plant Cell
巻: 28 ページ: 55-73
10.1105/tpc.15.00949