高温や乾燥環境下でもCO2を濃縮することにより高い光合成活性維持できるC4型光合成は、亜熱帯や半乾燥地域の草原に生息する植物が進化的に獲得した機構である。本研究では、従来のような、C4型酵素群の導入によるC3型作物のC4化ではなく、進化過程を模倣した遺伝子改変によるC4化分子育種を目指して、C4型への進化に関わるゲノム変異を明らかにする。Flaveria属植物(キク科)には、C3型からC4型への進化の途中に位置するC3-C4中間型の種が数多く現存し、これらのうちC3-C4中間種とC4型に近いC4様種の間では交配可能である。C3-C4中間種とC4様種のF2交雑集団を用いて、量的遺伝子座(QTL)解析を行う。当該当年度は、1)C3-C4中間種F. floridanaおよびC4様種F. browniiのゲノム配列情報の整備、2)F. floridanaとF. brownii間のDNA多型探索と分子マーカーの作製、3)F2集団を用いた表現型と遺伝子型の連鎖解析を行った。 1)C3-C4中間種F. floridanaおよびC4様種F. browniiのゲノム配列情報の整備:連携研究者の協力のもと、F. browniiの次世代シーケンスゲノムアセンブル配列に対しmRNAシーケンス配列をマップしたドラフトゲノム情報を得た。 2)F. floridanaとF. brownii間のDNA多型探索と分子マーカーの作製:主要なC4代謝酵素をコードする遺伝子のDNA多型検出分子マーカーを作成した。 3)F2集団を用いた表現型と遺伝子型の連鎖解析:連鎖解析の結果、C4代謝酵素の遺伝子発現はその遺伝子の遺伝子型に依存しないことが明らかになった。
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