研究課題
代表者らはMYB型転写因子EPR1内に新しい転写抑制モチーフERDを同定した。植物固有の転写抑制モチーフSRDXを用いた機能重複転写因子の解析法(CRES-T法)は植物では広く用いられているが、酵母や動物には適用できなかった。SRDXとは異なり、代表者らの見出したERDは植物だけでなく酵母と動物細胞における転写を抑制した。ERDを介する転写抑制のメカニズムは進化の過程で真核生物が植物界、菌界、動物界に分化する以前に誕生したと考えられる。本研究では真核生物において高度に保存された未知の転写抑制メカニズムを明らかにすることを目的とする。本年度はEPR1の転写抑制モチーフの詳細な解析を行った。その結果、EPR1には少なくとも二つの転写抑制モチーフが存在し、それぞれが生物界ごとに異なる活性を示すことが明らかになった。EPR1の生物界を超えた転写抑制能は、作用機構の異なる二つの独立したモチーフに依存すると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
本年度は植物細胞、酵母、動物細胞におけるEPR1の転写抑制モチーフを、欠失変異タンパク質を作製して解析した。その結果、植物細胞におけるEPR1の転写抑制モチーフERDは酵母においても強い転写抑制能を示すことが明らかになった。しかし動物細胞においてERDは転写抑制能を示さなかった。そこで動物細胞におけるEPR1の転写抑制モチーフを探索した結果、ERDとは別の領域ERXが転写抑制能を担うことが明らかになった。ERXは酵母においても転写抑制能を示したが、植物細胞では転写抑制能を示さなかった。したがって真核生物において広く機能するEPR1転写抑制能は二つの独立したドメインにより構成されることが明らかになった。この結果はERDが植物細胞だけでなく酵母と動物細胞においても転写抑制を示すという当初の予測とは異なるものの、新たに発見したERXも生物界を超えて転写抑制を示すことが明らかになったので、ほぼ期待される成果が得られたと考えられる。
これまで転写抑制の解析では、VP16などのアクチベーターにERDなどを接続し、アクチベーターの機能を抑制できるかを指標としてきた。次年度はEPR1の二つの独立した転写抑制モチーフERDとERXが、強いプロモーターの転写を抑制できるかを調べる。植物細胞では35SプロモーターにGAL4の標的配列であるUASを接続したコンストラクトをレポーターに、GAL4DNA結合ドメインにERDなどを接続したコンストラクトをエフェクターとしてトランジェントアッセイを行う。植物ではコリプレッサーとしてTPLとその関連因子TPRが知られている。大規模解析においてTPLの結合タンパク質としてEPR1が報告されていることから、EPR1の転写抑制にはTPLが関与する可能性がある。EPR1とTPLが植物細胞内で複合体を形成するか、Bimolecular fluorescence complementation (BiFC) 法や共免疫沈降法により調べる。
本年度の研究において、EPR1は生物界を超えて機能する二つの独立した転写抑制領域をもつという予想外の発見があった。そこで当初計画していたERDの作用メカニズムの解析に先行して、新たに見出したERXの解析を行ったため次年度使用額が発生した。
ERDの作用メカニズムの解析に必要な共免疫沈降法関連試薬の購入に充てる。
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