研究課題/領域番号 |
26650101
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 陽介 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183855)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 植物 / 発現制御 |
研究実績の概要 |
代表者らはMYB型転写因子EPR1内に新しい転写抑制モチーフERDを同定した。植物固有の転写抑制モチーフSRDXを用いた機能重複転写因子の解析法(CRES-T法)は植物では広く用いられているが、酵母や動物には適用できなかった。代表者らの解析しているEPR1は植物だけでなく酵母と動物細胞においても転写を抑制することができる。ERDを介する転写抑制のメカニズムは進化の過程で真核生物が植物界、菌界、動物界に分化する以前に誕生した可能性が考えられる。本研究では植物、酵母、動物におけるEPR1の転写抑制モチーフを解析し、真核生物において高度に保存された未知の転写抑制メカニズムを明らかにすることを目的とする。前年度に続きEPR1の転写抑制モチーフの詳細な解析を行った。その結果、EPR1には少なくともA領域とE領域の二つの転写抑制モチーフが存在し、それぞれが生物界ごとに異なる活性を示すことが明らかになった。A領域とE領域の配列には相同性は認められなかった。酵母とシロイヌナズナではEPR1のA領域とE領域が転写抑制能を示し、ヒト細胞ではA領域のみが転写抑制能を示した。これらの結果から、EPR1のA領域が真核生物全般で転写抑制能をもつことが示唆された。EPR1の生物界を超えた転写抑制能は、作用機構の異なる二つの独立したモチーフに依存すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は植物細胞、酵母、動物細胞におけるEPR1の転写抑制モチーフを、欠失変異タンパク質を作製して解析した。その結果、植物細胞におけるEPR1の転写抑制モチーフE領域は酵母においても強い転写抑制能を示すことが明らかになった。しかし動物細胞においてE領域は転写抑制能を示さなかった。そこで新たにEPR1の転写抑制モチーフを探索した結果、E領域とは独立したA領域も転写抑制能を担うことが明らかになった。したがって真核生物において広く機能するEPR1の転写抑制能は二つの独立したドメインにより構成されることが明らかになった。当初、EPR1の転写抑制モチーフはE領域のみであり、E領域が植物界、菌界、動物界において転写抑制を示すと予測していたが、実際はもっと複雑であった。新たに発見したA領域も生物界を超えて転写抑制を示すことが明らかになったので、ほぼ期待される成果が得られたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度新たに同定されたEPR1の転写抑制A領域内にアミノ酸置換変異を導入し、どのアミノ酸が転写抑制に重要か調べる。その変異の影響を植物細胞、酵母、動物細胞において調べる。 植物ではコリプレッサーとしてTPLとその関連因子TPRが知られている。大規模解析においてTPLの結合タンパク質としてEPR1が報告されていることから、EPR1の転写抑制にはTPLが関与する可能性がある。EPR1とTPLが植物細胞内で複合体を形成するか、Bimolecular fluorescence complementation (BiFC) 法や共免疫沈降法により調べる。EPR1とTPLが相互作用する場合は、EPR1内のA領域、E領域のどちらとTPLが結合するか調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
EPR1は生物界を超えて機能する二つの独立した転写抑制領域をもつという予想外の発見があった。新たに見出したE領域の解析を重点的に行ったため次年度使用額が発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
EPR1の転写抑制メカニズムの解析に必要な共免疫沈降法関連試薬の購入に充てる。
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