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2014 年度 実施状況報告書

防御から共生への受容体機能変換の生化学的機構

研究課題

研究課題/領域番号 26650104
研究機関明治大学

研究代表者

澁谷 直人  明治大学, 農学部, 教授 (70350270)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード植物免疫 / 共生 / LysM受容体 / 構造・機能 / キチン
研究実績の概要

シロイヌナズナのキチン受容体CERK1のキナーゼドメインは、自己リン酸化を介して下流の免疫応答を制御していることが知られている。一方、われわれはこのキナーゼドメインにわずか3アミノ酸配列(YAQ)を導入することによって、下流のシグナル伝達経路を共生シグナル伝達系に変換できることを示している(Nagagawa et al., 2011)。本研究ではこうしたシグナル伝達系の変換がどのようにして可能になったかを明らかにすることを目指している。本年度においては大腸菌で発現したCERK1キナーゼドメインおよびそれにYAQ配列を導入したものを用いて、この配列の導入が自己リン酸化部位の変化に結び付いているかを検討した。その結果、意外なことに自己リン酸化部位には有意な変化が認められなかった。このことは、YAQ配列の導入が自己リン酸化部位の変化を通じて下流の応答に影響しているのではなく、この配列の導入による構造変化そのものが下流の応答の切り替えにつながっていることを示唆している。実際に、YAQ配列の挿入部位をCERK1細胞内ドメインの分子モデリングにより検討した結果、この配列がキナーゼの基質認識部位近傍に位置することを示唆する結果が得られた。また、自己リン酸化部位特異的変異を導入した形質転換体やin vitroリン酸化実験などによる解析から、自己リン酸化部位の中には下流のシグナル伝達系因子との相互作用に影響する部位があることも示唆されている。今後、こうした点も踏まえながら、YAQ導入によるキナーゼドメインの構造変化と下流のシグナル伝達系制御の関連についてさらに検討していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

YAQ配列導入による下流の応答の制御は自己リン酸化部位の変化ではなく、キナーゼドメインの構造変化に起因することを示唆する結果を得ており、今後の研究の焦点が絞られてきた。また、本課題に関連する重要な論文を発表した。

今後の研究の推進方策

YAQ配列の導入によるCERK1キナーゼドメインの構造変化を明らかにするため、異種発現系による大量発現と結晶化、構造解析を目指す。CERK1がリン酸化する共生関連シグナル伝達系因子についても解析を進めたい。

次年度使用額が生じた理由

初年度における自己リン酸化部位の解析とその機能解析は、学内共同研究の利用やこれまでに確立したシステムの利用により、大きな支出を伴わなかった。一方、結晶化を目指した異種発現系による目的タンパク質の大量発現に関しては、コドンを合わせた人工遺伝子合成などの高額支出が次年度になったため、この面でも支出が抑えられた。予算的には2年度目に比重を置いた支出計画となる。

次年度使用額の使用計画

次年度においては目的タンパク質の大量発現と精製・結晶化に関して、特殊高額試薬や外注に関わる支出を計画している。また、関連する研究成果の学会発表、論文発表の経費を見込んでいる。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Bifunctional plant receptor, OsCERK1, regulates both chitin-triggered immunity and arbuscular mycorrhizal symbiosis in rice.2014

    • 著者名/発表者名
      K. Miyata, T. Kozaki, Y. Kouzai, K. Ozawa, K. Ishii, E. Asamizu, Y. Okabe, Y. Umehara, A. Miyamoto, Y. Kobae, K. Akiyama, H. Kaku, Y. Nishizawa, N. Shibuya, T. Nakagawa
    • 雑誌名

      Plant and Cell Physiology

      巻: 55 ページ: 1859-1863

    • DOI

      10.1093/pcp/pcu129

    • 査読あり
  • [学会発表] キチン受容体を介した植物免疫制御機構2014

    • 著者名/発表者名
      渋谷直人
    • 学会等名
      日本応用糖質科学会平成26年度大会
    • 発表場所
      新潟県新潟市
    • 年月日
      2014-09-24 – 2014-09-26
    • 招待講演
  • [学会発表] ネ受容体型キナーゼOsCERK1による共生応答と防御応答の選択2014

    • 著者名/発表者名
      宮田佳奈・ 香西雄介・小澤憲二郎・小八重善裕・賀来華江・西澤洋子・渋谷直人, 中川知己
    • 学会等名
      日本植物学会第78回大会
    • 発表場所
      川崎市
    • 年月日
      2014-09-12 – 2014-09-14
  • [学会発表] A SINGLE LysM RECEPTOR KINASE, RICE OsCERK1, SWITCHES REJECTION OR ACCEPTANCE OF INFECTING MICROBES.2014

    • 著者名/発表者名
      Tomomi Nakagawa, Kana Miyata, Toshinori Kozaki, Yusuke Kouzai, Kenjirou Ozawa, Kazuo Ishii, Erika Asamizu, Yoshihiro Okabe, Yosuke Umehara, Ayano Miyamoto, Yoshihiro Kobae, Kohki Akiyama, Hanae Kaku, Yoko Nishizawa, Naoto Shibuya
    • 学会等名
      第16回植物・微生物相互作用の分子機構に関する国際シンポジウム
    • 発表場所
      ギリシャ、ロードス市
    • 年月日
      2014-07-06 – 2014-07-10
  • [学会発表] The role of a LysM receptor-like kinase, OsNFR5 for root mycorrhization in Oryza sativa.2014

    • 著者名/発表者名
      Kana Miyata, Yusuke Kouzai, Kenjirou Ozawa, Yoshihiro Kobae, Hanae Kaku, Yoko Nishizawa, Naoto Shibuya, Tomomi Nakagawa
    • 学会等名
      第16回植物・微生物相互作用の分子機構に関する国際シンポジウム
    • 発表場所
      ギリシャ、ロードス市
    • 年月日
      2014-07-06 – 2014-07-10
  • [学会発表] Ligand recognition and membrane signaling by plant chitin receptors2014

    • 著者名/発表者名
      Naoto Shibuya
    • 学会等名
      Networks in Immunity Workshop
    • 発表場所
      米国、デービス市
    • 年月日
      2014-04-01 – 2014-04-03
    • 招待講演
  • [図書] The Lotus japonicus genome2014

    • 著者名/発表者名
      T. Nakagawa, S. Okazaki, N. Shibuya
    • 総ページ数
      267
    • 出版者
      Springer

URL: 

公開日: 2016-05-27  

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