研究課題
シロイヌナズナのキチン受容体CERK1のキナーゼドメインは、自己リン酸化を介して下流の免疫応答を制御している(Miya et al., 2007)。一方、われわれはこのキナーゼドメインにわずか3アミノ酸配列(YAQ)を導入することによって、下流のシグナル伝達経路を共生応答経路に変換できることを示している(Nakagawa et al., 2011)。本研究ではこうしたシグナル伝達系の変換がどのようにして可能になったかを明らかにすることを目指している。昨年度は大腸菌発現タンパクを用いた検討の結果、YAQ配列導入によって自己リン酸化部位は変化しないことが分かった。このことは、YAQ配列の導入は自己リン酸化部位の変化を通じてではなく、この配列の導入による構造変化そのものが下流の応答の切り替えに重要であることを示唆している。こうした構造変化を原子レベルで明らかにするため、野生型およびYAQ配列導入変異体CERK1の細胞内ドメインの構造解析をめざし、異種発現系を用いた大量発現と精製法の検討を行った。様々な発現系とタグを付加した融合タンパクを利用した大量発現、精製条件を検討した結果、マルトース結合タンパク質融合型CERK1細胞内ドメインを大腸菌で発現することにより、高純度の融合タンパク質を培養液1Lあたり8mg程度調製することに成功した。現在、タグの除去と精製、結晶化を目指して実験を進めている。一方、CERK1細胞内ドメインの自己リン酸化と下流のシグナル伝達系因子の活性制御の関係を検討した結果、自己リン酸化部位の一部が下流のシグナル伝達系因子の特異的なリン酸化、活性制御に関わることを示唆する結果を得た。細胞内ドメインの立体構造解析とこうした生化学的解析の結果を総合することにより、CERK1を介した免疫応答と共生応答の制御機構を分子・原子レベルで理解できることが期待される。
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