本年度は、遺伝子改変した集光アンテナタンパク質を大腸菌タンパク質発現システムを用いて精製し、得られた精製タンパク質と色素を再構成することで人工的に集光アンテナタンパク質を創り出すことを目指した。陸上植物シロイヌナズナには集光アンテナタンパク質をコードする複数の遺伝子が存在しており、それら全ての遺伝子のリン酸化部位を改変することを行った。これまでに報告されているリン酸化修飾されるアミノ酸残基と報告はされていないがリン酸化修飾の可能性があるアミノ酸残基をそれぞれ恒常的にリン酸化、もしくは脱リン酸化するようにアミノ酸置換を行い、それらを個別に大腸菌タンパク質発現ベクターに組み込むことに成功した。次に、それぞれの大腸菌で発現した遺伝子改変型集光アンテナタンパク質のHisタグ精製を行い、目的の集光アンテナタンパク質を大量に得ることに成功した。そして、得られたタンパク質と各光合成関連色素(クロロフィルやカロテノイド)を混合し、in vitro再構成を行うための条件検討を行った。その結果、精製タンパク質と色素がうまく組み込む条件を見出し、それらをショ糖密度勾配超遠心法で精製することにも成功した。しかし、現段階では精製した集光アンテナタンパク質の機能的な性質についての解析が必要である。今後、これらの精製タンパク質とチラコイド膜の性質と同様の脂質を混合し、それらを融合することで集光アンテナプロテオリポゾームの形成、そして、その後のタンパク質イメージング解析へと繋げる必要がある。
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