研究課題/領域番号 |
26650107
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
川上 良介 北海道大学, 電子科学研究所, 助教 (40508818)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 超解像顕微鏡 / 透徹化 / 収差 / 生体脳 / 固定脳 / 集光特性 |
研究実績の概要 |
共焦点顕微鏡における励起光のベクトルビーム化の効果を検証するためにはサンプル内における集光条件が非常に重要である。前年度の研究成果により、高散乱体ファントムにおいて励起光の集光を検証した結果、励起光率は大きく低下するが、その集光特性は変化しないことが明らかになった。しかしながら、固定脳においてはその脳領域や部位において異なる集光特性を示すことが明らかになった。これは、脳組織の持つ屈折率差により発生する収差が集光に大きな影響を与えていると考えられた。そこで、屈折率調整可能な透徹剤を新たに調整することによってサンプルを透明化し、さらに収差の低減を試みた。その結果、固定のスライス表面から数十μmの深さにおいては集光が保たれる条件を見出した。そこで、励起光の集光特性が同様に重要な超解像顕微鏡法である構造化照明顕微鏡(N-SIM)においてその条件の応用を試みた。その結果、未処理の固定脳スライスでは観察不可能であった固定脳深部領域において超解像効果が得られ、さらに長期ストレスのモデルマウスでもある人工副腎皮質ホルモン長期投与マウスにおいて、その神経細胞シナプスのスパイン構造が微細に変化していたことを見出した。この成果は固定脳内における集光特性についても詳細に検討しており、顕微鏡法としての有意義性が高いと考えている。次に、生体脳における集光特性についての詳細な解析を実施した。その結果、生体脳イメージングにおいてはそのカバーガラスの傾きや厚さ、浸液の屈折率の調整によって大きく改善することが明らかになった。集光特性の向上は焦点における励起光のエネルギー密度の向上を意味する。現在、この調整法を生体脳内における神経回路のピンポイント破壊への応用が可能であることを見出し、論文化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度における達成度はおおむね順調に進展している。透徹化固定脳における集光特性の評価について、さらに実験条件を追加し評価を実施することでより正確な収差の評価が実施できた。また、生体脳における集光特性の評価についてはさらに焦点領域のピンポイント破壊条件の検討を実施し、その影響を明らかに出来たことで、より有用で応用性のある顕微鏡法の提唱ができるようになったと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
H29年度について、透徹化収差補正固定脳サンプルと超解像顕微鏡との組み合わせに寄る新たな顕微鏡観察法の提唱として論文化を急ぐ。また、生体脳におけるin vivo2光子顕微鏡法の集光特性の評価および生体脳点破壊への応用としての論文の投稿を急ぐ。本研究成果は顕微鏡法の改良に分類されることから、該当学会への参加、情報収集を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本来は昨年度において学会参加および論文投稿を実施する予定であったが、DATAの取得および解析に想定以上の時間を要してしまった為、年度を越えて延長し、研究成果の公表を目指す。
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次年度使用額の使用計画 |
Focus on microscopy および神経科学学会等の該当学会への参加。原著論文の英文校閲および投稿料へ使用する予定である。
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