研究課題/領域番号 |
26650108
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
飯郷 雅之 宇都宮大学, 農学部, 教授 (10232109)
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研究分担者 |
宮本 教生 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (20612237)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 深海魚 / 光受容体 / 体内時計 / 時計遺伝子 |
研究実績の概要 |
深海は,高水圧,低温,低栄養,低酸素,暗黒の極限環境であり,地球上に残されたフロンティアのひとつである.深海に棲息する生物の生理や行動が日周リズムを示すかどうかについてはわかっていない.そこで,本研究においては,深海魚における体内時計の存在とその分子機構を(1)光入力系,(2)体内時計自身,(3)出力系の三者に分けて検討し,深海魚の体内時計の特性を明らかにする.これにより深海魚の体内時計の適応と進化の総合的理解を進め,深海時間生物学および深海光生物学研究分野を確立する.深海魚が示す生理・行動の日周リズム,季節リズムの解明や海面から入射する太陽光が深海魚に与える影響の評価から,深海生物が地球全体の生態系に与えるインパクトを把握するための基盤を確立する.平成26年度は以下の研究を進めた. 1.次世代シーケンサーを活用した光受容体遺伝子群の網羅的同定と発現部位の解析:JAMSTECからコンゴウアナゴ5尾の提供を受け,次世代シーケンサーを用いたmRNA-Seqにより網膜,脳の光受容体遺伝子群の網羅的同定を試みた. 2.次世代シーケンサーを活用した全ゲノム解析:コンゴウアナゴ肝臓よりゲノムDNA を抽出し,次世代シーケンサーによる全ゲノムDNAの塩基配列解析を開始した.また,東海大学海洋科学博物館で公開解剖されたメガマウスザメの肝臓からゲノムDNA を抽出し,次世代シーケンサーによる全ゲノムDNAの塩基配列解析を開始した. 今後はさらに検討を進め,光受容体や時計遺伝子群を網羅的に同定し,遺伝子の発現部位同定や発現リズム測定を進める予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
JAMSTECより良質なコンゴウアナゴ試料を入手することができたため,mRNA-Seq解析についてはNGSライブラリーの作成とシーケンスを3個体について行うことができた.おおむね順調に研究は進行しており,今後さらに2個体のNGSライブラリーの作成とシーケンスを行う.また,全ゲノム解析も順調に進んでおり,データの蓄積とアセンブル,さらにはデータベース化と相同性検索によって,光受容体遺伝子群および時計遺伝子群の同定が達成されると予測される.メラトニン測定については生存個体の入手ができなかったため行うことができなかったが,平成27年度には重点的に研究を進める予定である.また,粗相外の試料としてメガマウスザメの試料が入手できたことが特筆される.
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の研究項目をさらに推進する.また,下記の項目についても検討する. 1.深海魚の培養松果体からのメラトニン分泌リズム測定:深海魚を捕獲し,松果体をさまざまな光条件(明暗,恒暗,および恒明条件),温度で灌流培養して3時間毎に培養液を分取し,培養液中に放出されたメラトニン量をラジオイムノアッセイにより測定し,メラトニン分泌リズムを指標に松果体における体内時計の有無と体内時計の性質を調べる. 2.培養細胞における体内時計機能の解析:深海魚由来株化細胞の確立とともに,すでに確立されている株化細胞を入手して,リアルタイムPCRによる時計遺伝子発現解析,ならびにルシフェラーゼをレポーター遺伝子とした長期連続イメージングにより,深海魚の体内時計機能の解析を行う.
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