研究課題
本研究では、ラット下垂体隆起部で産生される因子の新たな作用経路を明らかにすることを目的とし、脳脊髄液と隆起部との関係に着目して実験を行った。まず、麻酔下ラット大槽内へ翼状針を用いて西洋ワサビペルオキシダーゼ (HRP)を投与し、10分、30分及び60分後に灌流固定を行い、脳内へのHRPの浸透を解析した。その結果、HRPの脳実質内への浸透度は投与後の時間経過に従い有意に上昇した。また、ヘマトキシリン染色による観察により、HRPのシグナルは隆起部周辺のLobule構造を取り囲むように局在していた。一方、下垂体主部ではHRPのシグナルは観察されなかった。さらに、頸静脈内へHRPを投与し、末梢血液循環からの脳内への浸透の可能性を検討したところ、脳実質内でHRPのシグナルは検出されなかった。次に、ラット隆起部をレーザーマイクロダイセクション法によって採取した後に得られたタンパク質抽出液及びラット大槽より採取した脳脊髄液から得られたタンパク質抽出液からペプチド分画を精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法/ 飛行時間型質量分析 (MALDI/TOF-MS)によって解析した。3 kDa~16 kDaの範囲において隆起部ペプチド抽出液と脳脊髄液で同じ質量と考えられる因子が数個検出された。以上の結果は、隆起部で産生される因子が脳脊髄液に放出され、第三脳室上衣細胞層に存在する受容体へと作用する経路がある可能性を示唆している。現在、隆起部組織と脳脊髄液に共通して検出される因子の同定を行っている。
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