研究課題
本研究では、広塩性と狭塩性の違いを決定する因子を見出すことを目的とし、軟骨魚類では数少ない広塩性種であるオオメジロザメの腎臓の解析を進めている。複雑な腎ネフロンのうち、後部遠位尿細管(LDT)は低塩分環境においてのみ特定のイオン輸送体を発現する。そこでこの後部遠位尿細管の機能を調節する因子の探索を目的とした。1)26年度には4個体(海水群と淡水群各2個体ずつ)の腎臓を用いてRNA-seqを行ったが、27年度は発現が異なる遺伝子の同定を進めた。インフォマティクス解析により、すでに発現が顕著に変化することを見出しているNaCl共輸送体以外にも、多数の電解質輸送体、水チャネルなどの発現が変化することがわかった。多くの場合、発現量の違いが統計的に有意であることがqPCRにより確認されている。2)淡水環境で重要なNaCl再吸収に関わる遺伝子について、腎ネフロンでの局在を調べたところ、LDT以外にも、集合細管において、NaCl共輸送体や上皮性ナトリウムチャネルなどの発現が淡水移行によって出現するようになることがわかった。我々の尿素再吸収モデルをもとに考えると、集合細管でのNaCl再吸収亢進は、最終的に尿素再吸収を促進することが目的であると示唆された。3)26年度に、真骨魚類において淡水適応に重要なプロラクチンが、軟骨魚類にも存在することを見出した。27年度には、プロラクチン受容体のクローニングにも世界で初めて成功した。さらにRNA-seqにより、真骨魚類のカルシウム調節を行うスタニオカルシンも軟骨魚類で初めて同定した。スタニオカルシンやインスリン様成長因子も腎臓での発現が淡水群と海水群で異なることから、プロラクチンを含め、広塩性の支配に関わる候補因子を多数同定することができた。
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