研究課題
生物は、多様な組織・細胞・細胞内小器官から構成される一つの複雑な社会である。個々の細胞や細胞内小器官のもつミクロな「個性」を分子レベルで理解するためには、顕微鏡で狙った細胞を選択的に試験管内に取り込む技術の開発が必須となる。本研究課題では、赤外線レーザーによって細胞を生きたまま操作することができる光ピンセットと、飛躍的な進歩を遂げているマイクロ流路を組み合わせることにより、新たな細胞回収法の開発を目指した。具体的な対象としては、酵母様菌類クリプトコッカスやクラミドモナスにおける葉緑体やミトコンドリア核様体の遺伝に注目した。これまで光ピンセットによる細胞単離に用いてきたガラス製マイクロチャンバー(Nishimura et al, PNAS 1999, PNAS 2006, Plant Cell 2012)は、1つ1つ手作業で作成する必要があり、1つのチャンバーで1個の細胞しか回収出来ず、さらにガラス面に細胞が接着しやすく短時間しか作業ができないなど、多くの未解決な問題点があった。本研究においてマイクロチャンバーの構造から材質まで検討した結果、透明樹脂製のマイクロチャンバー(ibidi社)を応用することで光ピンセットによる操作性や捕捉力を損なうことなく、細胞接着を著しく抑制し、長い作業時間を実現した。さらに細胞の回収にマイクロピペットを用い、1度に複数の細胞を回収することも可能となった。以上の技術を用いて、酵母用菌類クリプトコッカスの接合時におけるミトコンドリア核様体の動態を解析し、片親のミトコンドリア核様体の消失とミトコンドリアDNA分解の瞬間を1細胞で捉えることに成功した(Nishimura et al., 論文準備中)。
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