研究実績の概要 |
本研究は、複眼の進化研究に視細胞のdeep homologyを新機軸として加えて感桿構造の多様性を評価、視覚系進化に関する理解を深めることを目的とした、ユニークな試みである。 昆虫複眼には性質の異なる個眼がランダムに混ざり合って分布している。ハエ類では2タイプの個眼、チョウ類では3タイプの個眼がある。一方、1つの個眼に含まれる視細胞はハエで8個、チョウで9個である。昨年までの研究で、チョウ類ではハエ類の色覚視細胞のうちprospero遺伝子の発現で特徴付けられる視細胞(R7)が2つに重複していることがわかった。チョウ類個眼に2つずつあるR7様細胞には、個眼タイプを決めるspineless遺伝子が3パターン(on-on, on-off, off-off)で発現していた。spineless遺伝子をCRISPR-Cas9法でノックアウトすると成虫の個眼タイプ多様性が消失したことから、spineless遺伝子の発現パターンが成虫における3タイプの個眼に対応していることが分かった。 アシナガバエ類の複眼を詳細に調べたところ、性質の異なる個眼がランダムではなく、規則的に配列している種が見つかった。規則的個眼配列を作り出すメカニズムを探るための基礎的情報を得るため、複眼の構造および光学的性質を調べた。
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