研究課題/領域番号 |
26650119
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
七田 芳則 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (60127090)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 視物質 / 視細胞 / 暗ノイズ / 生化学的手法 / 分子進化 |
研究実績の概要 |
交付申請書に記載した実験計画に沿って、ロドプシン発色団の熱異性化に由来するGタンパク質活性化量を測定する実験を行った。具体的には、1)実験試料として培養細胞系で発現させたロドプシン(オプシン)を用い、2)発現させたロドプシンを界面活性剤で抽出して精製し、3)オプシン活性を抑えるレチナールアナログとして7員環レチナールを用いて実験を行った。その結果、7員環レチナールと結合させたオプシンではGタンパク質の活性化は観測されず、天然のレチナールと結合させたオプシンからは活性化が有意に観測された。以上の結果から、上記の実験条件でロドプシン発色団の熱異性化の頻度を観測できることがわかった。また、同様の実験を異なる動物のロドプシンや錐体視物質を試料として行い、それぞれ、発色団の熱異性化の頻度を観測できることがわかった。興味深いことに、ロドプシンと錐体視物質では熱異性化の頻度に大きな違いがあり、両者の比は電気生理学的に観測されていた値に近いことがわかった。さらに、ロドプシンおよび錐体視物質の変異体の作製に取り組み、それらの一部については、発色団の熱異性化の頻度を測定することにも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、ロドプシンおよび錐体視物質の発色団の熱異性化を測定するための実験条件の設定を試みた。当初は種々の条件を検討する予定であったが、特に7員環レチナールを利用する測定が十分に効果的であることがわかり、計画を前倒ししてロドプシンおよび錐体視物質の変異体の作製と測定にまで進むことができた。また、ロドプシンでは動物種が違っても熱異性化の頻度はそれほど変わらないが、錐体視物質ではかなり違うことがわかり、錐体視物質の違いを今後の研究計画に組み入れることを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り、発色団の熱異性化の頻度(速度)に関与するアミノ酸残基の特定を目指す。そのため、種々の変異体を作製して、それらにおける発色団の熱異性化の頻度を測定する。また、同じグループに属する錐体視物質の間で発色団の熱異性化の頻度が大きく異なることがわかったので、これらについても、発色団の熱異性化の頻度を決定しているアミノ酸残基の特定を目指す。以上の実験をもとに、最終的に、ロドプシンの暗ノイズの低減メカニズムをアミノ酸残基のレベルから明らかにすることに挑戦する。
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