研究課題/領域番号 |
26650122
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中川 将司 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 助教 (00212085)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 光遺伝学 / ホヤ幼生 / 神経回路 / 神経機能 / 行動 |
研究実績の概要 |
ホヤ幼生は、僅か100個足らずの神経細胞で中枢神経系を形成しており、特定の行動がどのように生じているのか、神経レベルで調べることが可能と思われる。本研究の目的は、光照射により神経の発火を誘導できるチャネルロドプシンを用いて、特定の神経を興奮したときに生じる行動を観察し、神経回路とその出力である行動との関係を明らかにすることである。まず、一細胞レベルで光刺激を与えることができる単一細胞光刺激装置を開発した。照準用630nm、チャネルロドプシン活性化用488nm及び、光変換蛍光タンパクmKikGRの緑色蛍光を赤色蛍光に変換するための405nmレーザを同軸上に集光させると共に、ビーム径を10umに絞り込めるようにした。またレーザを切り替えた時に対物レンズの色収差により焦点面が変化するため、補正できるようにした。 特定の神経タイプだけにチャネルロドプシン及びその細胞をマークするための光変換蛍光タンパク質mKikGRを発現するコンストラクトを作製し、受精卵に導入することでホヤ幼生のコリン作動性神経及びGABA作動性神経特異的にチャネルロドプシンを発現することができた。 コリン作動性神経にチャネルロドプシンを発現させた幼生を用いて実験を行ったところ、運動神経節に存在する5対の神経のうち前から3番目の神経に刺激光照射した時、幼生の遊泳運動が発動された。その後本格的に実験を行うとしたが、ホヤの発生が悪くなり正常な幼生が得られず、再現実験もできなかった。そこで、全神経細胞にチャネルロドプシンを発現するトランスジェニックゼブラフィッシュ稚魚を用いて実験を行った。耳胞部の一部の細胞に光刺激光を照射したとき、素早い逃避行動が見られた。単一細胞光刺激装置は、ゼブラフィッシュで適用可能であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
単一細胞光刺激装置が完成し、現有の倒立顕微鏡に設置した。しかし、試料を設置する上で極めて操作性が悪かったので試料台を改良した。試料台改良により、微妙に光軸がずれ、レーザビームの形状が悪化してしまい、それを修復するのに時間が掛かった。既存のパルス発生制御装置をレーザコントローラに接続し、レーザ発振のタイミングをコントロールできるようにした。照準用630nm、チャネルロドプシン活性化用488nm及び光変換蛍光タンパク質の蛍光色を変換する為の405nmレーザを長作動距離対物により集光する際に生じる焦点の補正を行った。昨年暮れにほぼ測定系が完成し、本格的に実験を始めた。 コリン作動性神経にチャネルロドプシンを発現した幼生を用いて実験を行い、個々の神経に光照射したところ、運動神経節に存在する5つのコリン作動性神経の真ん中に位置する神経が尾部運動を引き起こすことが分かった。しかしその後の発生が悪くなり、チャネルロドプシンを発現する正常な幼生が得られなくなり、実験が頓挫した状態になっている。例年水温が下がる冬場では、自然放卵せず卵が過熟になるため、受精率が減少し、奇形率が増加するものの、実験できるだけの幼生は得られていた。しかし今年度は、何度受精させても正常な幼生が得られず、また強制放卵させて新規の卵を産生するのを待ってから、受精させたりしているが、今のところ一向に正常な幼生が得られていない。その為、コリン作動性神経での実験は一回のみで、本年度の計画予定であったGABA神経の光遺伝学的測定はまだできていない。
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今後の研究の推進方策 |
5月頃から新しく育ったホヤが成熟してくるので実験は再開できる。申請者等は、形態的観察から、ホヤ幼生の尾部運動は運動神経節部に存在する5個のコリン作動性ニューロンとその下流に存在し左右を交差する逆行性GABA/グリシン作動性ニューロンからなる回路によって引き起こされると考えている。しかし、今のところ、その仮説を実証するデータは得られていない。まずは、各々のコリン作動性ニューロンを光刺激で発火させ、どのニューロンが尾部運動に関与しているのかを明らかにする。次に逆行性GABA/グリシン作動性ニューロンによって、運動ニューロンはどのように制御されているのかを調べる。逆行性GABA/グリシン作動性ニューロンが反対側の運動ニューロンを抑制するかを確認する。 さらに、GABA/グリシン作動性ニューロンから抑制性信号が解除されると、その運動ニューロンが抑制性反跳(post-inhibitory rebound)によって、再発火することで、持続的に左右交互に尾部を振る運動が引き起こされるのではないかと、申請者等は考えている。光照射で片側のGABA/グリシン作動性ニューロンを興奮しておき、刺激光をオフ後に尾部ふり運動が見られるかを観察し、この仮説を検証する。 運動神経節の背側に数個のGABA/グリシン作動性ニューロンが存在し、腹側に向かって軸索を伸ばしている。それらの神経の機能は、まだ分かっていない。それらの細胞を光刺激で発火させ、遊泳運動にどのように関与しているかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
ホヤの餌等消耗品類を他の助成金で支払うことができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
単一細胞光刺激装置の3つレーザの色収差補正を手動で行っているが、より正確で迅速に補正を行えるように小型Z軸自動ステージを取り付ける。
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