本研究の目的は、セントラルドグマという生物の基本原理と、マイクロ波という電磁気学を掛け合わせ、生命の進化への電磁波による促進効果を明らかにすることである。セントラルドグマの複製、転写、逆転写、翻訳の過程における電磁波の効果を明らかにすることで、地球誕生から最初の生命誕生までの6億年における生命進化に対する新たな知見を得ることができると期待した。加えて、マイクロ波の進化への影響を明らかにする以外にも、電磁場環境下の生物への考察や酵素反応促進技術への応用も期待できる。 研究実施計画において、初年度に空洞共振器と半導体発振器を用いたマイクロ波装置の信頼性の向上を進めながら、無細胞翻訳系を構築し、その後セントラルドグマの反応をおこなう計画を立てた。サーモグラフィーを導入させて頂き、また共振器にマイクロ波加熱しながら反応容器表面温度を測定できるよう改造をおこなった。本反応系は、50μLの微量スケールであるため攪拌をおこなっていないが、サーモグラフィーによって反応温度の均一性を確認し、反応温度の信頼性を高めることができた。無細胞翻訳系は大腸菌翻訳系を採用し、発現タンパク質として蛍光蛋白質GFPを選択した。GFPの発現を蛍光プレートリーダ、蛍光スキャナで評価することができる。無細胞翻訳反応は、GFPのDNAから発現と、RNAから発現するパターンをおこなった。結果として、DNAから翻訳したパターンでは通常加熱と同じ蛍光量であったが、RNAから翻訳した場合通常加熱ではDNAからと同じ蛍光量であったが、マイクロ波加熱では3倍以上の蛍光量を確認することができた。また、この反応促進の原因は、反応組成の温度測定ならびに電磁界解析シミュレーションにより、バッファのイオン成分がマイクロ波により高効率に加熱されることにより通常加熱と同じ反応温度でありながら異なる反応場になった可能性を示唆した。
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