研究課題/領域番号 |
26650138
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
鈴木 真吾 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, 研究員 (60379154)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 環境適応 / 実験進化 / ゲノム変異 / ゲノム立体構造 / 核様体タンパク質 / 細胞壁合成阻害剤 / 大腸菌 / ゲノム重複 |
研究実績の概要 |
研究代表者らによる先行研究により、ストレス環境下における耐性株の出現は、突然変異と選択からなる一般的な適応進化機構に加え、ゲノム変異を伴わない環境適応とその表現型を安定かつ長期的に記憶する機構が寄与していることが示唆されている。ゲノムDNA立体構造の変化およびそれが保持されることによって適応能が安定かつ長期的に記憶されているという仮説のもと、本研究課題では、記憶機構を担う遺伝子群の同定と適応進化過程におけるそれら遺伝子群の挙動解析から、ゲノム変異によらない記憶機構の全体像を解き明かす。さらに、同定された遺伝子破壊株の様々な環境ストレスに対する適応進化過程を解析することにより、適応進化におけるゲノム変異によらない記憶機構の普遍性を評価する。 本年度は、ゲノムDNAの立体構造を制御するNAPs(Nucleoid Associated Proteins)遺伝子群の破壊株を作製し、それを元株とした進化実験を行うことで記憶機構を担うNAPs遺伝子の同定を行った。細胞壁合成阻害剤に対する進化実験を行ったところ、複数のNAPs遺伝子破壊株において耐性能の上昇が顕著に抑制されることを発見した。 また、記憶機構の解明を迅速に遂行するためには、ゲノム変異を伴わずに耐性能を上昇させ安定に保持している耐性株を得ることが重要であるので、我々が独自に開発した全自動実験進化システムを用いて膨大な数の耐性株の取得およびそのゲノム変異解析を行った。その際、点変異や小規模な欠損および挿入変異の他に、大規模なゲノムの重複も細胞壁合成阻害剤に対する耐性能の上昇に大きく寄与することが判明したので、この重複を簡便に検出することが可能な定量PCR法の構築を行うとともに、重複を起こし難いリコンビナーゼ破壊株を用いることで、ゲノム重複の寄与を除外することが可能な実験進化システムの構築にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通りに記憶機構に関与すると考えられるNAPs遺伝子の同定に成功した。また、当初においては予定していなかったゲノム重複の耐性能への寄与に関しても、簡便な検出系の開発およびその影響を除外する実験系の構築に成功しており、本年度に計画していた研究内容は概ね遂行された。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に同定したNAPs遺伝子群の発現制御が可能な組換え体を作製し、その発現をONからOFF、また逆にOFFの状態からONへと切り替える実験進化を行うことで、NAPs遺伝子の記憶機構への関与を明確にする実験系を構築する。また、全自動実験進化システムを用いた耐性株の取得を継続する。遺伝子発現制御株および耐性株を解析することで、ゲノム変異を伴わない環境適応とその表現型を安定かつ長期的に記憶する分子機構の解明を執り行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
小額であり、より有効活用するために次年度に繰り越すこととした。
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次年度使用額の使用計画 |
全自動実験進化システムを用いた耐性株取得のための消耗品費にあてる。
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