研究課題
環境微生物による外来DNAの獲得頻度の評価と,その獲得における環境因子の影響解明を目的に,フローサイトメーターを用いた実験系の確立を行った.蛍光分子ラベルを施したDNAとコンピテントセル(外来DNAを細胞内に取り込みやすい状態にある大腸菌)や環境試料を一定時間培養したところ,一部の細菌においてDNAの取り込みを確認することができた.この実験系を用いて,地熱水試料を対象に,カルシウムなど重金属濃度や温度との相関について次に調査を行った.特に,硫黄酸化細菌の優占する源泉上流から,紅色硫黄細菌のいる中流,シアノバクテリアや緑色非硫黄細菌の優占する下流への変化に着目した.この試料では,上流から下流にかけて,温度は63度から50度まで減少し,カルシウム濃度も7mMから3mMまで減少するという系統的な変化が確認された.しかし,DNA取り込み実験の結果,取り込みが期待される集団の割合は極めて低く,系統的な変化を見出すことは困難であった.一方で,細胞外DNAの積極的な取り込みが示唆される一部の湧水試料では,実験に供与するDNAの鎖長を変化させた場合,比較的短いDNAで取り込み率が高くなる傾向が確認された.しかし,取り込みが確認される細胞は,数時間以上の培養を経ると確認されなくなることから,この取り込みは一時的なものであり,長時間保持・定着するものではないと示唆された.なお,同様の実験を放射性同位体標識DNAを用いて実施しているが,バックグラウンドシグナルが高く,この方法は有効ではないことが明らかとなっている.
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地球科學
巻: 69 ページ: 141-142