• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2014 年度 実施状況報告書

ポーリネラの珪酸被殻構築機構と生物による珪酸外被形成の進化の解明に向けた初期研究

研究課題

研究課題/領域番号 26650142
研究機関筑波大学

研究代表者

石田 健一郎  筑波大学, 生命環境系, 教授 (30282198)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード進化 / 原生生物 / シリカバイオミネラリゼーション / リザリア / 珪酸質被殻 / Paulinella chromatophora
研究実績の概要

平成26年度は、被殻関連タンパク質の同定と被殻形成関連タンパク質遺伝子の探索のため、単離被殻鱗片のプロテオームと、被殻形成関連遺伝子のトランスクリプトームデータからの推定を行なった。
<単離被殻鱗片のプロテオーム解析>
被殻関連タンパク質(表在性タンパク質および内在性タンパク質)を網羅的に同定するため、大量(30L)のポーリネラ細胞を培養し、タンパク質抽出に十分量の細胞を得た。その後、フレンチプレスにより細胞を破壊し、その中から珪酸質鱗片のみを単離した。EDTA、NaCl、尿素、SDS、フッ化水素酸により、表在性~内在性までのタンパク質を段階的に抽出し、SDS-PEGEにより分離・精製した。複数の主要なバンドを切り出して質量分析を行い、各タンパク質の同定を行ったところ、複数のタンパク質の推定アミノ酸配列を得ることに成功した。このうちの一つは、既知のタンパク質とは相同性をもたない、ポーリネラに特有の珪酸質被殻関連タンパク質であることが分かった。
<殻形成特異的遺伝子の推定>
殻形成関連遺伝子を特定するため、同調培養系の確立を目指しているが、本来増殖の遅い生物であるため未だ確立には至っていない。もう少し時間がかかるため、引き続き明暗周期での確立を目指す。同調培養系ではないが、ポーリネラMYN1株を約3L培養し、明らかに被殻形成中の細胞を含む状態でRNA抽出、トランスクリプトーム解析を行い、珪藻において珪酸被殻形成に関与しているタンパク質の相同性検索を行ったところ、シリカトランスポーター(sit)に相同性のある配列を発見した。予測ソフトを用いた解析により、ポーリネラのsitは珪藻の半分の5回膜貫通領域を持つことが明らかとなった。化石記録から最古のSilica-biomineralizationを行っていた生物はポーリネラを含むユーグリファ類であると示唆されており、もともと5回膜貫通型だったsitが珪藻で10回膜貫通型となった可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

単離鱗片のプロテオーム解析については、十分量の鱗片の単離、タンパク質の段階的抽出、電気泳動による分離、質量分析による部分アミノ酸配列の推定まで順調に進めることができた。同定の際にポーリネラに特有と思われる珪酸被殻関連タンパク質が推定されたことも予想以上の成果で期待が持てる。同調培養系の確立は、細胞増殖が遅く、確立には至っていないが、同調培養を用いないトランスクリプトーム解析において、当初の目的であった被殻形成関連遺伝子の一つと思われるsit遺伝子の同定に至り、珪藻におけるホモログとの比較により、本遺伝子の進化的知見が得られたことは、同調培養系の遅れをある程度カバーできたのではないかと考えている。

今後の研究の推進方策

<単離被殻鱗片のプロテオーム解析>
今年度のプロテオームデータの解析をさらに進め、必要があれば再度データ取得を行ない、更なる被殻関連タンパク質の同定を進める。
<被殻関連タンパク質の局在解析>
プロテオーム解析得られた被殻関連候補タンパク質について抗体を作成する。抗体は外部委託により作成する。作成した抗体を用いて、間接蛍光抗体法により細胞内局在を調べる。次に免疫電子顕微鏡法により各候補タンパク質のさらに詳細な局在を明らかにする。これにより、細胞内での鱗片形成と細胞外での殻構築に関与するタンパク質の機能を推定する。
<被殻関連タンパク質の進化推定>
プロテオーム・トランスクリプトーム解析により候補タンパク質となり、局在解析により被殻関連タンパク質であることが確認されたタンパク質について、珪藻やその他の珪酸沈着能のある生物で、相同タンパク質の存在を相同性検索により探索する。もし得られたタンパク質が新規であるか、ごく少数の生物でしか報告がない場合には、リザリアやストラメノパイル系統群に属する生物からの相同遺伝子配列の収集を試みる。収集した遺伝子配列をもとに分子系統解析を行い、被殻関連タンパク質の進化に関する知見を得る。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Paulinella chromatophora珪酸被殻構築過程における微小管・アクチン繊維の観察2014

    • 著者名/発表者名
      野村真未、石田健一郎
    • 学会等名
      日本植物学会
    • 発表場所
      明治大学生田キャンパス、多摩区、川崎
    • 年月日
      2014-09-12 – 2014-09-14
  • [学会発表] Fine Structure Observation during siliceous shell formation of a testate amoeba Paulinella chromatophora (Euglyphid)2014

    • 著者名/発表者名
      Mami Nomura and Ken-ichiro Ishida
    • 学会等名
      ESF-EMBO共催 Biology of plastids : towards a blueprint for synthetic organelles
    • 発表場所
      プルトゥスク・ポーランド
    • 年月日
      2014-06-21 – 2014-06-26
  • [学会発表] 有殻アメーバ Paulinella chromatophoraにおける珪酸質被殻構築過程の微細構造および微小管・アクチン繊維の観察2014

    • 著者名/発表者名
      野村真未、石田健一郎
    • 学会等名
      日本細胞生物学会
    • 発表場所
      東大寺総合文化センター、奈良
    • 年月日
      2014-06-11 – 2014-06-13

URL: 

公開日: 2016-05-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi