陸上植物の胞子体拡大進化をもたらした分子基盤の解明のため、他のコケ植物よりも胞子体分裂組織が長期間維持されるツノゴケの発生進化研究モデルの確立を目的として研究を進めた。 2017年度は1.連携研究者である金沢大学の西山智明博士によるAnthoceros agrestisのゲノムシークエンス解析により、131.6 Mbのアセンブリーが得られ、Anthoceros agrestisゲノム中には約25000個の遺伝子が存在すると推定された。2. 他のコケ植物で胞子体発生遺伝子として機能しているKNOX遺伝子、LFY遺伝子、WOX遺伝子をAnthoceros agrestisゲノムにおいて探索し、複数の遺伝子を同定した。これらの遺伝子の発現解析を行なうべく、プロモーター領域の単離を試みた。各遺伝子の推定コード領域の5’末端領域のうち、開始コドンの直前から隣りの別の遺伝子のコード領域までを推定プロモーター配列とし、クローニングを行なった。5. 胞子体特異的に発現する遺伝子を特定すべく、胞子体と配偶体のRNAシークエンスを予定していた。配偶体組織、及び造精器のRNAシークエンスライブラリーを作成し、シークエンスを取得した。一方、2017年度までに発生初期の胞子体と胞子体分裂組織を維持している時期の胞子体のRNAシークエンスライブラリーを作成したので、2017年度にシークエンスを2回行ったが、原因不明のライブラリーの不具合のため、データを取得することはできなかった。再度胞子体のRNA-seqライブラリーの作成を試みたが、研究実施期間内に作成を完了できなかった。
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