研究課題
温暖地と寒冷地に由来するミヤマハタザオの5系統を、温暖な大津、寒冷なチューリッヒ、寒冷な菅平、特に寒冷な西駒に移植し、その後の成長と生存を追跡し、由来地の気候と似ている圃場で生存率が高いというホームサイトアドバンテージが観察された。また、大津とチューリッヒでは、野外移植後に得られた種子を移植地を交換して再移植する実験も開始し、実験開始後の生存・成長・繁殖の一年間の追跡データが得られたのでその解析を継続した。こうしたホームサイトアドバンテージが生じる仕組みとして考えられる生活史の適応について検討を行った。標高が異なる様々な集団の、野外におけるデモグラフィーのデータを元に行列モデルによる解析を行った。低標高の集団ほど、年生存率や平均寿命が低く、繁殖開始齢が低く、個体あたりの種子数が多いという一年草に近い特徴を持っている。また、高標高の集団は温暖地では夏季の生存が適応度を律速している。これらの生活史形質の標高間の違いには、遺伝的際をともなっており、生活史進化の興味深い材料となる。難発芽集団の種子を発芽させる方法として、吸水・冷湿・暗黒・種皮剥ぎ等のこれまでに検討した処理に加えて、ストリゴラクトン処理の有用性を検討した。標高適応性や環境応答性についての研究成果を、長期生態学的研究や生物多様性-生態系研究の枠組みの中で発表・発展させていくために、国際・国内会議等に参加した。野外生態系の中で進化生物学を展開していく統一的な生物学の方向性が重要である。
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American Journal of Molecular Biology
巻: 7 ページ: 1031-1046
10.4236/ajmb.2017.74012