研究課題/領域番号 |
26650162
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
土田 浩治 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (00252122)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ハダカアリ / 防衛行動 / 社会性昆虫 / 死骸 |
研究実績の概要 |
ハダカアリは日本の本州から沖縄までの海浜の岩場や公園などに生息し、その巣の入り口には、しばしば、他種アリの死骸が集められるのが観察される。多くのアリ種では、死骸やゴミなどはダニや病気の発生源となるため、巣場所から離れた場所にゴミ捨て場を作ることが適応的であると考えられてきた。しかし、ハダカアリの場合は、巣の入り口に集められた死骸には他種アリがそのほとんどを占めていたことから、単なるゴミ捨て場として機能しているのではなく、他種アリなどから巣を防衛する機能を果たしている可能性を示唆している。そこで、野外調査を行って、巣の入り口にある死骸の種類を同定し、その種とハダカアリの巣場所近辺に分布するアリ種との種構成の比較を行った。その結果、オオズアリなどのハダカアリの巣場所近辺に分布しないアリ種も含まれていたことから、生息場所の広範囲から死骸を集めていることが明らかになった。また、死骸の置かれているハダカアリの巣の割合を算出した結果、巣の入り口が下方を向いている場合を除いて、ほとんど全ての巣において、巣の入り口に死骸が置かれていることが明らかとなった。そこで、死骸を集める条件について室内実験によって検証した。その結果、他種アリの死骸とエサ(ミールワーム)を明確に区別しており、さらに室内環境下で長期間飼育したハダカアリは死体収集をしないことから、他種アリの接触や攻撃などを経験してから引き起こされる行動であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野外で、ハダカアリによる、他種のありの死骸を、巣穴近くに集める行動を確認できた。また、その種構成から、生息場所の広範囲から死骸を集めている可能性が示唆できた。さらに、この防衛行動には学習の要素があることを明らかに出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、コロニーサイズと防衛行動の関係、学習と防衛行動の関係を室内実験で明らかにする。また、しがいの匂い物質も同定し、防衛行動を触発する匂い物質を特定し、生物検定を行う予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
死骸の化学的な分析を始めることが出来なかったので、その資金を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
死骸の化学分析と生物検定に使用する予定である。
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