純粋培養しているシアノバクテリアSynechococcus leopoliensis CCAP1405/1株(以下1405/1株)は、液体培地で増殖するが、寒天培地上では増殖できない。しかし、Bacillus subtilis 168などの従属栄養細菌を共培養すると1405/1株が増殖する。共培養した細菌が寒天培地での1405/1株の増殖阻害を解除していると予想した。そこで、従属栄養細菌が寒天培地で1405/1株を増殖させる能力に関与する遺伝子を同定し、この機構の解明を試みた。平成26-27年度にB. subtilis 168の1405/1株増殖誘導能欠損株をスクリーニングして関与遺伝子を同定してシステイン生合成における亜硫酸還元酵素の関与を示し、さらに寒天培地上で硫黄源をめぐる競合関係があると推察した。 平成28年度はB. subtilis 168のシステイン生合成が1405/1株の増殖誘導にどのように関与しているかを調査するために、1405/1株増殖誘導能欠損株のシステイン生合成に関与する別の5つの遺伝子を欠損させた株を作成して増殖誘導を調査した。システインシンターゼをコードすると推定される遺伝子を破壊すると、増殖誘導能欠損株の誘導能が相補された。亜硫酸還元酵素は亜硫酸塩を硫化物に、システインシンターゼはその硫化物とO-アセチルセリンからシステインを合成することから、B. subtilis 168が生産する硫化物が増殖誘導に関係することが推察された。また、B. subtilis 168野生株と1405/1株増殖誘導能欠損株では培地中に存在する硫黄源の種類によって寒天培地上での硫黄源をめぐる競合関係が異なることが示された。B. subtilis 168は環境条件に応じて1405/1株の増殖を誘導するかを決定していると予想している。
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