研究課題
本研究では、地球表面積の7割を占める海洋の底のさらに下に広がる海底下地層に生息する微生物を研究のターゲットとする。生命生存の極限に位置する環境を対象とし、現場を特徴付ける環境条件を遺伝子の誘導因子、すなわちアクセスの扉とし、機能を特定することが著しく困難な遺伝子の機能探索を実施することを目的とした。具体的には微生物の代謝基質となりうる物質を用いて遺伝子のスイッチがONとなるような遺伝子発現誘導を行い、膨大な環境中の遺伝子断片から発現が起こった遺伝子断片を効率的に取り出すことの出来る機能遺伝子発現解析(SIGEX:Substrate Induced Gene Expression)を応用する。平成26年度は統合国際深海掘削計画の第329次掘削研究航海で採取された南太平洋環流域海底下試料を対象としてSIGEX用の遺伝子ライブラリー作成を実施した。南太平洋中央に広がる南太平洋環流域では、海洋表層のプランクトンなどによる光合成一次生産の活性が著しく低く、すなわち海底下環境への栄養供給が極めて限られた状態にある。そのため、海底下には栄養が極限的に欠乏した超貧栄養環境が広がっている。このような環境から得られた海底下堆積物試料からDNAを抽出した。抽出したDNAはライブラリー作成用に十分な量に至らなかったため全ゲノム増幅法を用いて増幅を行い、いくつかの処理を行った後に遺伝子機能解析用のライブラリー作成を行った。
2: おおむね順調に進展している
ライブラリー作成の手法改良は滞りなく進み、目的としていたバリエーションのライブラリーサイズを達成することが出来た。また、南太平洋環流域試料からいくつかのライブラリーを作成することに成功した。
今後は、ライブラリーに対して基質誘導を行い、発現誘導が起こった大腸菌クローンを選別することで、基質に対して応答を示したDNA断片の取得、それに続く塩基配列の決定を行う。
平成26年度に実施した実験は、既存の装置、抽出済みのDNAを用いて大部分が実施可能であったため、研究費使用額が当初計画より低くなった。
平成27年度はDNAの抽出を実施してライブラリーの作成を継続するが、極小量のDNAを増幅する試薬やライブラリー作成に必要な試薬、海底下試料の保管や分取などにかかる消耗品を購入し研究を遂行する。
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