研究課題/領域番号 |
26650172
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
松本 晶子 琉球大学, 観光産業科学部, 教授 (80369206)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 創傷治癒 / 霊長類 / ほ乳類 / 攻撃頻度 / 皮膚 |
研究実績の概要 |
本研究は、「攻撃行動により創傷を負うことが多い種では、創傷治癒速度が速い」かどうかを検証するものである。 平成27年度8-9月の期間に、ケニア・ライキピア地域で、野生ヒヒの集団に生じた攻撃行動と創傷に関するデータを収集した。具体的には、集団間と集団内における攻撃頻度、攻撃者、創傷を負う頻度、創傷のサイズ、創傷の治癒速度を記録した。収集したデータを帰国後に分析したところ、平成26年度に実施した人為的な創傷実験の結果を支持するものであると考えられた。 平成26年度の調査の際に、野生のヒヒが創傷を受ける原因として当初予想していなかった捕食者からの攻撃もあることが明らかとなった。そこで、平成27年度の調査ではヒヒにGPSを装着し、捕食者との位置関係を調べ、創傷が捕食者によって与えられたものかについてもデータを収集した。 平成26年度に実施した人為的な創傷実験の結果から推定される創傷治癒速度を決定要因を裏づけるために、国内で研究協力者の大学院生が主となり、ブタ、マウス、ヌードマウス、ウサギといった霊長類以外の動物を対象として、創傷治癒速度を測定する比較実験を実施した。これらの結果は、ヒト、ヒト以外の霊長類、霊長類以外のほ乳類の創傷治癒速度に関する新たな発見となるものであった。 野生下、実験下の予備的な結果は、11月に開催された日本人類学会においてそれぞれ発表をおこなった。学会で得られたコメントをもとに、現在論文を作成しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
申請時には霊長類内の創傷治癒速度を明らかにすることを想定していたが、予定より実験の部分が早く終了した。そこで、平成27年度は霊長類以外の実験動物を比較対象として加えることで、結果をより強固なものとすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26,27年度の結果から、皮膚の状態を変化させる遺伝子を探る新たな研究を計画することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年3月にヒヒにGPS装着し、8か月の稼働期間を経て、平成28年2月にはずす予定であった。しかし、ケニア側のGPS装着許可担当者が下りるのが遅れたため、装着が平成27年9月になった。順次ずれたため、GPSを外すのが平成28年度になったことによる。
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次年度使用額の使用計画 |
ケニアでは、野生動物に装着したGPS機器は動物福祉の観点から調査後に取り外すこととなっている。次年度使用となった費用は、GPSの取り外しのための旅費と費用に使用する。
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