研究課題
近年、気温の上昇により熱中症発病者が急増し、特に熱中症高齢者の増加が特記される。熱中症の予防として適度な水分と塩分の補給が推奨されているが、口渇感や暑さへの感受性が弱い高齢者にとってはその実施が難しい。根本的な熱中症予防は暑さに身体を慣らす、つまり暑熱順化と考えられる。しかし暑熱順化の分子機構の解明はほとんど進んでいないのが現状である。本研究は暑熱順化の分子機構を解明し、“熱中症のなり易さ・なり難さ”を予測する生物学的分子指標を探索することにある。平成26年度に明らかになったこと、熱を含むストレスへの強さ弱さについて記載する。熱中症の際、暑さだけではなく、脱水な様々なストレスが病態の増悪を引き起こすからである。(1)暑熱順化により、シャペロンタンパク質である熱ショックタンパク質(HSPs)群が誘導される。細胞依存出来であるが水輸送体であるアクアポリン発現も変動する。アクアポリン発現については予想外の細胞での変動を観察し、今後の研究の発展を希望している。また、暑熱順化期間が2か月を超えると、暑熱耐性は確固なものとなるが、低酸素に対しても耐性(強くなる)を獲得することを見出した。(2)食中毒は雑菌の繁殖から気温が温かくなったころに一つのピークがあるが、腸管出血性大腸菌食中毒模倣下では細胞内のシャペロンタンパク質HSP70の発現減少が観察された。そのHSP70低下細胞にヒートショックストレスを加えると細胞死が誘導されることを見出した。
2: おおむね順調に進展している
暑熱順化のメカニズムは複雑である。しかしながら、一つ一つの細胞、組織、そしてそれらから全体を俯瞰することでそのメカニズムを解明できると考える。本年度はシャペロンタンパク質である熱ショックタンパク質(HSPs)群の重要性、水代謝の重要性、低酸素ストレスとの互換性、そして特殊環境下での熱およびHSPs群の重要性を明らかにできたため、概ね順調に進展していると思われる。本年度の結果は、次年度での研究推進に極めて有用であると思われる。
暑熱順化のメカニズムは複雑である。そのため、一つ一つの細胞、組織、そしてそれらから全体を構築することでメカニズムを解明できると考える。次年度(平成27年度)は、本年度で検討されなかった項目を含めて研究推進を行う。その中の一つでバイオマーカーについても検討を加える予定である。現在の生命科学ではバイオマーカーの有用性が理解されている。
平成26年度は予定していた細胞(ノックダウン)とは他の方法でノックダウンと同等の実験ができたためノックダウンにかかる費用が節約できた。その分は次年度に充填する。また、情報収集や成果発表のための活動の一部は次年度への先送りとしたため、次年度使用額が生じた。
平成26年度予定していた細胞(ノックダウン)実験にかかる費用は、次年度の研究推進のための経費に充てる。また、次年度へ先送りとした情報収集や成果発表のための活動費は、次年度での成果発表や情報収集のために旅費およびその他(英文校正費、投稿料など)も必要最小限充てる。50万円以上の物品の購入はない。
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