我々のこれまでの研究により,操作デバイスに微小振動(わずかに感じるレベル)を付与し,デバイスを介して操作の主働筋をわずかに刺激することにより,トラッキング作業(追従操作)の精度が向上する場合があることが分かってきた.そこで本研究では,この効果を汎用的に利用するために,正の効果が得られる振動条件の抽出と,そのメカニズムの解明(主働筋内の筋紡錘に確率共鳴現象が生じ,筋紡錘の機能(動きの分解能)が向上した効果と仮定)を目的としている. 2014年度の検討では,仮説に基づき,筋冷却により筋紡錘に一時的な機能低下状態を生じさせ,その時の振動付与の効果を追従成績から検討した(被験者8名).この筋冷却の程度は表面皮膚温を基に判断した.実験の結果,筋紡錘のみの機能低下時に追従成績が有意に低下したことから,操作精度の向上に筋紡錘が寄与している可能性を得た. 2015年度は,この筋紡錘の寄与をさらに検討するため,筋温に近い皮下1cmの深部温を計測できる装置を用い,筋冷却時の操作成績と筋温の関係を検討した.実験の結果,筋紡錘のみの機能低下時に追従成績が有意に低下したことから,操作精度の向上に筋紡錘が寄与している可能性,および筋紡錘の機能低下時でも微小振動付与の正の効果が得られる可能性を得た.さらに正の効果が得られる振動条件は,操作の主働筋がある上肢部位の共振周波数が含まれる可能性を得た. 上記成果を,6th International Conference on Applied Human Factors and Ergonomics (2015年7月,アメリカ),第3回「触知覚原理に基づく触覚技術の産業・医療応用」研究会 (2015年11月,名古屋工業大学)にて発表した.
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