研究課題/領域番号 |
26660001
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
金澤 章 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30281794)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / 植物 / 発生 / RNA |
研究実績の概要 |
RNAサイレンシングの強度を制御し、植物の代謝産物の含量を最適化することを念頭に置き、RNAサイレンシングの動態に関する解析を行っている。これまでに、緑色蛍光タンパク質 (GFP) 遺伝子を導入したダイズにおいて、この遺伝子のRNAサイレンシングが起きている個体を得て、その後代の植物集団に関するRNAサイレンシングの起き方に関して解析を行った。その結果、RNAサイレンシングが発生段階のある時点で起き、発生の進行に伴って誘導範囲が拡大し、やがては全身的なRNAサイレンシングへと進行することを見出した。RNAサイレンシングの起き方が、同一な遺伝的背景を持ったダイズ系統においても、個体間ならびに世代間で異なるため、あらたに生殖の過程でのRNAサイレンシングの伝達、および生殖後の植物体の生長過程でのRNAサイレンシングの誘導に焦点を当て、同一家系の植物体集団を用いて解析を行った。その結果、生殖の過程でRNAサイレンシングが起きなくなることを見出し、いったんRNAサイレンシングがリセットされることを確認した。さらに、生殖後の胚の発生過程において種子中の組織がRNAサイレンシングの広がりを阻害していることを示唆する結果を得た。また、同一家系内でRNAサイレンシングの程度が顕著に異なる個体を見出した。この結果から転写後のRNA分解によるサイレンシングを起こした状態から、転写抑制へと推移した可能性が考えられた。RNAサイレンシング経路の酵素遺伝子に関するartificial microRNAを産生する遺伝子を導入したダイズ個体を自殖してホモ化するとともに、標的遺伝子のmRNA量の減少等を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
緑色蛍光タンパク質遺伝子のRNAサイレンシングが起きているダイズを材料として解析を行い、生殖過程を経ることにより、この現象がリセットされること、ならびに、その機構として受精後の胚発生の過程でRNAサイレンシングを誘導を阻害する機構の存在が示唆された。後者の知見は当初予想しなかった結果であった。一方、RNAサイレンシング経路の抑制について、解析用の材料を作出することができた。これらのことから、概ね計画どおりに進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究代表者はこれまでの解析において、ダイズにおける緑色蛍光タンパク質 (GFP) 遺伝子のRNAサイレンシングを解析することが、RNAサイレンシングの動態の解析に有効であることを認識した。そのため、この実験系を用いた解析を継続し、GFP遺伝子のRNAサイレンシングを起こす組織が個体内でどのように拡大するかといった動態を解析する。また、RNA分解から転写抑制への推移の可能性を検討する。これらの解析に加え、RNAサイレンシング経路に含まれるタンパク質の遺伝子の発現量を低下された個体を作出している。この個体をGFP遺伝子のRNAサイレンシングが起きている個体に交配することによって次世代の種子を得て、植物体を育成する。この植物体の各発生段階におけるRNAサイレンシングの起き方、ならびに、その広がり方の動態を詳細に解析する。これらの解析を通して、RNAサイレンシングの強度の制御を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
物品費、とりわけ高額な解析キット類等の解析に係る費用、ならびに旅費、人件費を含む直接経費が全体的に当初の予定ほど必要とはならなかったことから、経費を節減できた。
|
次年度使用額の使用計画 |
経費の節約により生じた未使用額については、今年度に行う解析に関わる消耗品、人件費、ならびに、受託解析に要する費用の支払いに充てる予定である。
|