研究実績の概要 |
本研究は、これまで植物の環境応答においてほとんど解析されてこなかったイノシトールピロリン酸に着目し、その環境ストレス耐性における役割を明らかにすることを目指すものである。 (1) 生化学的解析:当初、OsKCS1~6を大腸菌で発現させ、回収したリコンビナントタンパク質を用いてin vitroで酵素活性を調べるという計画を立てていたが、6種類の遺伝子全てで、大腸菌で高発現させることが困難な状況にある。一方、イネ種子抽出物の高濃度ポリアクリルアミド電気泳動法によるイノシトールピロリン酸の分離・検出方法を確立することに成功した。 (2) 逆遺伝学的解析:6種類のOsKCS1~6に対応する発現抑制組換えイネを作出し、塩ストレス試験を行ったが、野生型イネとの差は明確ではなかった。そこで、遺伝子の系統樹解析から明らかになった3つのグループ(OsKCS1,2)(OsKCS3,4,5)(OsKCS6)それぞれに共通のDNA配列をもとに、グループごとに発現を抑制できるRNAiコンストラクトを作成した。現在、形質転換イネを作成中である。一方、OsKCSの高発現組換えイネの発芽試験からは、野生型に較べてABA感受性が高い系統や塩ストレス感受性が高い系統を同定することができた。 (3) 遺伝学的解析:2種類の低フィチン酸変異体の原因遺伝子を相補性実験から同定することに成功した。さらに、変異体と野生型種子に含まれるイノシトールピロリン酸量に差が見られることを明らかにした。 (4) 分子生物学的解析:RT-PCR解析から、塩ストレスに応答するOsKCSを明らかにした。また、OsKCS1~6のプロモーター領域をGUS遺伝子に連結させたコンストラクトを導入した組換えイネを作出し、植物体での発現部位を詳細に明らかにした。その結果、遺伝子間の発現部位にほとんど差は見られないことが明らかとなった。
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