研究実績の概要 |
イネ花粉管誘引物質を同定するためには, 遺伝子発現情報をもとに候補遺伝子の選抜を行う必要がある. そこでまず, 筆者らがこれまでに得たマイクロアレイ, および次世代シーケンサーによるイネ助細胞のトランスクリプトーム解析の結果を用いて, 助細胞で高発現し, かつ分泌性タンパク質をコードする遺伝子群を候補として選抜した. また, イネ助細胞ではシロイヌナズナ, トレニア等で同定された花粉管誘引物質遺伝子と相同性の高い遺伝子は高発現していないことが明らかになりつつあり, 今後はより慎重な選抜・評価が必要になると考えられる. 次に, イネ胚珠はシロイヌナズナ等の胚珠とは異なり組織が厚く, 通常の観察法では胚嚢内部の観察が困難であるため, イネ胚珠内におけるイメージング技術の改良を行った. 問題は, 胚嚢構成細胞特異的にGFPを発現させた形質転換イネ胚珠をそのまま観察しても, 珠心組織の厚さおよびその自家蛍光が原因で明確なGFP蛍光が観察できないという点にある. この問題を解決するため, 筆者は近年報告された複数のGFP蛍光を損なわない組織透明化法を適用し, イネ胚珠観察に最適な観察条件を検討した. その結果, イネ胚珠に関してはscale透明化液 (Hama H. et al. 2011) を用いた際に最も鮮明な胚嚢内GFP像が観察できることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
栽培温室の不具合および他の業務との兼ね合いで十分な研究時間が取れなかったため. また, 次世代シーケンサーを用いた遺伝子発現解析の結果に関して, マッピングの条件をわずかに変えるだけで発現量として出力される値が大きく異なってくることが明らかになり, 最適なマッピング条件とは何かという検討に時間がかかっているため.
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今後の研究の推進方策 |
次世代シーケンサーの結果に関しては, 早々にマッピング条件を確定し, 最終的な候補遺伝子の再選抜を急ぐ. 選抜された候補遺伝子に関してはRNAiあるいは近年イネにおける高効率性が注目されているCRISPR/Cas9システムを用いてノックダウン/ノックアウト形質転換体を作製し, 花粉管誘引時における表現型を確認する. 並行してイネsemi in vitro重複受精系の開発を行い, 候補タンパク質を用いた花粉管誘引アッセイの準備を進める.
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