研究実績の概要 |
育種的観点からも非常に重要な意味を持つイネ花粉管誘引物質を同定するためには, イネ助細胞における遺伝子発現プロファイルをもとにした候補遺伝子の選抜が有効であると考えられる. 申請者はこれまでに得たマイクロアレイ, および次世代シーケンサーによるイネ雌性配偶体構成細胞トランスクリプトーム解析の結果から, 助細胞において特異的に高発現する複数の分泌性タンパク質ファミリーを見出した. 興味深いことに, これらのタンパク質ファミリーの中にはこれまでにシロイヌナズナやトレニア等で同定された花粉管誘引物質LURE群は含まれておらず, イネにおいてはこれらの植物種とは異なるシステムで花粉管を誘引している可能性も示唆された. 候補遺伝子の選抜と並行して, イネに最適化したイメージング技術の改良も行っている. イネ胚珠はシロイヌナズナ等の胚珠とは異なり組織が厚いため通常の観察法では胚嚢内部の観察が困難である. 最大の問題は, 候補遺伝子を含む雌性配偶体構成細胞特異的発現を示す遺伝子にGFP等の蛍光タンパク質を融合発現させた際に, その珠心組織の厚さおよび自家蛍光が原因で明確なGFP蛍光が検出できないという点にある. そこで, GFP蛍光を損なわないとされる複数の組織透明化法を用いて条件検討を行ったところ, イネ胚珠に関してはscale透明化液を用いた際に明確なGFP蛍光が観察できることが明らかになった. 現在新たに報告されたTOMEI (Hasegawa J. et al. 2016) を用いた透明化に関しても検討を開始している.
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今後の研究の推進方策 |
選抜された候補遺伝子群に対して, 機能欠失変異体の作出を急ぐ. 変異体作出に際しては, 計画段階ではRNAiを用いるつもりであったが, 今後はより高効率とされているCRISPR/Cas9システムに切り替える予定である. 変異体作出に成功し次第, その花粉管誘引時における表現型を確認する. それと並行してイネsemi in vitro重複受精系の開発を行い, 候補タンパク質を用いた花粉管誘引アッセイの準備を進める.
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