研究実績の概要 |
花粉管誘引は植物の受精効率に直接的に関与する重要なステップであるものの, イネにおいてはその誘引に関わる花粉管誘引物質は未だ同定されておらず, 大きく研究が立ち遅れているのが現状である. この状況を打破すべく, 本研究では申請者がこれまでに行ってきたイネ助細胞における詳細な遺伝子発現プロファイルを元にイネ花粉管誘引物質の探索を行っている. イネ助細胞で高発現する遺伝子を調査したところ, 興味深いことにこれまでトレニアやシロイヌナズナにおいて同定された花粉管誘引物質LURE群は含まれておらず, イネにおいてはこれらの植物種とは異なる機構で花粉管を誘引している可能性が示唆された. 候補遺伝子の選抜と共に今後の解析に必要となるイメージング技術の改善も行っている. イネ胚珠のイメージングにおける最大の問題はその珠心組織の厚みゆえに内部構造およびGFP等の蛍光タンパク質の蛍光が明瞭に可視化できない点にある. そのような背景の中, まずGFP蛍光を損なわないと報告されている複数の組織透明化法を用いて条件検討を行ったところ, scale透明化液はイネ胚珠イメージングに十分に使用可能であり, これまでと比較して非常に明確なGFP蛍光が観察されることがわかった. 現在新たに報告されたClearSee透明化液による観察も検討中である.
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今後の研究の推進方策 |
これまでに選抜してきたイネ花粉管誘引物質候補遺伝子群に対して, 機能を欠失した変異体の作製を急ぐ. 課題申請時点ではRNAiによる発現抑制を考えていたが, 現在はイネにおいて非常に高効率であるとされるCRISPR/Cas9システムを用いたノックアウト株作製を計画しており, そのためのコンストラクト作製を進めている. それと並行してイネ胚珠イメージング技術の改善およびsemi in vitro重複受精系の開発を行い, 候補タンパク質を用いた花粉管誘引アッセイ実験を行う.
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