研究課題
Hd3a/FTタンパク質は長距離移動性の花成誘導因子・フロリゲンの分子実体であり、葉で合成された後に茎頂メリステムまで輸送されて機能する。フロリゲンが茎頂に蓄積することは、私達のHd3a-GFP発現イネにおける直接的なイメージングをはじめ複数の分子遺伝学的な実験によって示されており、広く受け入れられてきている。しかし、フロリゲンが茎頂メリステムに到達する様子やその時の正確な輸送経路等は不明である。これらの問題を解決するためには、フロリゲンが到達するプロセスを動画で撮影することがもっとも直接的であるが、この実験にはいまだ誰も成功していない。本研究では、私達が独自に確立してきたフロリゲンのイメージング系をさらに発展させ、フロリゲンがメリステムに到達するもっとも初期の様子を明らかにすることを目指している。このために、熱ショック誘導系を用いたHd3a-GFPの発現誘導系を構築し、一細胞レベルで熱ショックを与える事が可能なIR-LEGOによって局所的にHd3a-GFPの発現を誘導した後、Hd3a-GFPタンパク質の挙動を追跡することを試みる。これまでに、Hd3a-GFPの熱ショック誘導系イネを多数作出し、Hd3a-GFPの誘導過程が優良な系統を複数同定することができた。この過程で、翻訳効率を上昇させるエンハンサー配列の使用や強力なターミネーターの導入等を行った。今後はこれらの系統を用いて熱ショックで誘導したHd3a-GFPの顕微鏡観察を試みる。
2: おおむね順調に進展している
Hd3a-GFPの熱ショック誘導系のイネから優良系統を選抜できた。またフロリゲンの茎頂メリステム内の分布を明らかにし、フロリゲンのメリステム到達初期の分布も明らかにしたため。
Hd3a-GFPの熱ショック誘導系を用いて、一過的な誘導とその後のタンパク質の分布をイメージングする。
26年度は優良な翻訳エンハンサー配列や転写ターミネーター配列など本研究の熱ショック誘導系を強力なものにするために重要な要素に検討を加えることに集中し、タンパク質実験や観察のためのセットアップに研究費を使用しなかったため。
26年度に作成した形質転換イネを用いて27年度に観察を行う計画である。ここでは植物の共焦点レーザー顕微鏡観察に係るセットアップ、IR-LEGOのセットアップや誘導系植物の栽培等を行う技術補佐員が必要となる。
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Proc. Natl. Acad. Sci. USA
巻: 112 ページ: E901-911
10.1073/pnas.1417623112