研究実績の概要 |
本研究の目的は、高次倍数性作物種の遺伝解析に有用な新規レトロトランスポゾンファミリーを同定することである。最近申請者らは、レトロトランスポゾンの品種間挿入多型が高次倍数性作物種の遺伝・連鎖解析に極めて有用であることを見出した。通常、高次倍数性作物種の連鎖解析では複数の遺伝分離のパターンを考慮しなければならない。一方、レトロトランスポゾンの挿入部位マーカーは、後代系統において最も単純な分離比(優性:劣性=1:1)を示す。そのため、高次倍数性作物種の連鎖解析に極めて有用であると考えられる。しかし、ゲノム中に存在するファミリーの大部分は不活化しており、遺伝解析へ適用できない。そこで本研究では品種間挿入多型を示すファミリーを効率的に同定する手法を確立することとした。 本研究では同質六倍体の特徴を示すサツマイモを対象とした。まずは、LTR型レトロトランスポゾンの内部配列を利用したNGS解析により、サツマイモゲノム中のLTR型ファミリーを網羅的に同定した。サツマイモは、全ゲノム配列情報が利用できない(2015年に野生種は公開された)ため、ランダムに切断したDNAではなく、制限酵素処理により断片化したDNAをシーケンスすることでリードの共通性によりクラスタリングを行い、挿入部位を決定した。本解析では、4品種において合計8,462の挿入部位を同定した。得られた挿入部位を品種間で比較し、2,624の品種特異的な挿入部位を抽出した。これら品種特異的な挿入部位を解析することで、14の候補LTRファミリーを選定した。選定された14ファミリーについてS-SAP法により、品種間挿入多型や挿入部位数等を調査した。その結果、大部分のファミリーが高い品種間挿入多型を示すことが確認された。以上のことから、本手法は品種間挿入多型を示すファミリーを効率的に同定する上で極めて有効であることが示された。
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